Heroic Legend -終章の白-

□第102話 飛翔、そして…
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図鑑は確かに、ポケモンを調べる為に必要な道具だ。

ポケモンの鳴き声から姿、生息地や覚える技や足跡まで、何でも記録されている凄いマシン。

使いこなせば、ポケモンから教わらなくとも知識を得て詳しくなれるだろう。


でも、それは本当の意味でそのポケモンを知った訳じゃない。

その個々の性格や特徴を尊重しつつ、そのポケモンの長所を伸ばし短所をカバーしていく事を考えなければ、本当の意味でポケモンの"声"を聞いた事にはならない。


Nの言う事も一理あるが、それで全てを否定する言い方にボクは腹が立った。

「このボールは、ポケモンが安心して身体を休める場所を作るため!」

ジャルルのボールを取り出し、N達に見せ付ける。

「図鑑は、ポケモンの基礎知識だけを示す道具! この二つは、ポケモンの事をもっと知って仲良くなりたいと本気で願った人間が作り出した道具だ!
人間がポケモンと仲良くなりたいと願う事は、間違いでも許されない事でもないッ!!」

ジャルルが《リーフブレード》を発動し、尻尾が淡い緑色に輝き出す。

【せや、ウチらは互いに歩み寄ればどんな事でも出来ると知った! どんな苦しい戦いも乗り越えられると知った!
これが、その証やッ!】

尻尾が風を切って振り下ろされると、ゾロアークがそれをガッシリと爪で受け止めた。

【ゴチャゴチャ勝手な理屈をこねやがって…! テメーらみたいな根性論と理想論でどうにかしようとする奴らには、一生分からねーだろうな!】

ゾロアークの《つじぎり》が走る。

【あぁぁあぁぁぁッ!!】

ジャルルが目を見開いて悲鳴を上げた。

切り裂かれた位置は……見事に急所に入っていたのだ。


ドッ…と、地面へ倒れ込むジャルル。

「ジャルルッ!」

【ア、ア…カン…ちか…ら……が…】



「…勝負ありだね」

ジャルルに駆け寄り傷の具合を見ていると、Nが静かにそう告げた。

「キミ達はよく健闘したよ。でもポケモンを縛る道具に頼ってきた事がキミ達の敗因だ」

「…」

「そのジャルルはアララギ研究所から贈られたポケモンだったよね?」

「何故、それを…」

「ボクのトモダチが教えてくれた」


Nはボクが図鑑を持って旅立つ事や、その過程で指定されたポケモンを育ててその観察や記録を記す事、それらのデータを研究の為に使う事を全て言い当てた。

「用意され配達され観察され記録され……ポケモンはモノじゃないのに」
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