Heroic Legend -終章の白-

□第98話 北西の四天王・勝負師ギーマ
2ページ/18ページ




「聞きましたよぉ、ギーマさん。あの子を泣かせたんですってね?」

四天王ギーマの部屋。

小説のネタを拝借しに来たであろうシキミが、早速部屋の主であるギーマに取材を仕掛けていた。

「泣かせてないさ、シキミ君」

ギーマは相変わらずキザったらしく笑みを貼り付けたまま、カードシャッフルで遊んでいる。


「…ギーマさんはてっきり大人の女性がタイプかと思っていましたが、実は一回りも下の女の子を泣かせるというドSなロリコ…」

「だから泣かせてない。それに私はロリコンじゃない。妄想を爆発させないでくれ、シキミ君」

「最低ですわ。年下の女性を泣かせる男性……なんて大人気ない…」

一人暴走を始めるシキミの横から、欠伸をしながら登場する一人の少女。

花のように可愛らしい寝間着姿を着て、眠たそうだが確かに軽蔑の色が入った瞳でギーマを見下す。

「カトレア君まで…。何なのキミ達……。そんなに私を危険人物に仕立てたいのかい?」

「危険な性癖を持つ男と、まだ従順無垢な幼い少女が……おっといけない鼻血が…」

「シキミ、不埒な妄想をしない。はしたなくてよ」

「いや、すみませんカトレアさん。私の本業そっちじゃないのにちょっと暴走しちゃいましたね」

てへ、と軽く舌を出すシキミ。
所謂「てへぺろ☆」という行為だ。

「…というか、何しに来たのキミ達?」

「アタクシは、アナタが昨日の件で挑戦者にいらぬ事を言って泣かせた事を咎めに来ただけですわ。まったく酷い人ね…」

「いや、だから泣かせ…」

「アタシはっ、興味本位で取材ですっ!」

「シキミ君、少し黙っててくれないか?」

「黙りませんっ!」

万年筆をぶち折る程の勢いでシキミが鼻息を荒くして否定すると、ギーマは諦めたようにそっと溜め息を吐いた。


「…あの挑戦者、今日はアナタに挑むのかしらね…」

窓から見える会場のドームを眺め、カトレアが呟く。

「挑まなければ、それはそれで結構。キミが相手をするだけだからね」

「まぁ、何て無責任な発言ですこと…」

やる気の無いような口調で言うカトレア。

「第一、それでこのアタクシに挑むようなら、それは一種の逃げではなくて?
…そんな程度の低い方とは、戦いたくありませんわ」

「おっしゃる通りで……」

ギーマは少し愉快そうに笑うとカードをしまい、ポケットからコインを取り出した。



「…さぁ、キミ達はどう出る?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ