Heroic Legend -終章の白-

□第95話 宿命のトーナメント対決
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「………」

「おはよ、フォリア」

「……オハヨウ…ゴザイマス(低音)」

「まだ具合悪いの?」

「うん……もう平気…」

ぼんやり虚ろな表情で周囲がドン引きしている中、普通に声を掛けてきたのはライカ。

一緒にトレーを取り、朝食を取りに列に並ぶ。

「昨日、皆とモニターで見てたけど、災難だったわね」

「おかげで奥歯という犠牲が出てしまったよ…」

湿布が貼られた頬をさすりながら、テーブルに置かれたサラダの小鉢を取る。

「…朝に本戦ブロックの表示を見たけど、ライカはNと同じブロックなんだけっけ?」

「そう、いよいよよ…。ついにこの時が来たんだわ」

ハムエッグの皿を取りながら、ライカは強く拳を握る。

「N兄様は私が止める。だからフォリアが勝ち残っていれば、いつかはチャンピオンを決める為に戦わなくちゃいけない相手ね」

「おぅ…メラメラと熱気が…」

「当然よ。この日の為に、私達は一緒に鍛えてきたんだから。ね、ピピル?」

【えぇ!】

ライカの肩に乗るピカチュウは、ハート型のような尻尾を伸ばして頷く。

「だから、お互い頑張りましょう?」

「そうだね。その為には、まずは沢山食べとかなきゃ…」

昨日は胃が空っぽのまま床に就いたから、朝から腹が鳴りっぱなしだ。

少し多めの朝食を眺めながら、デザートに昨日食べて美味しかったプリンに手を伸ばす。


……が。

「あれ…?」

プリンの容器が動かない。
不審に思って容器に目を落とすと、ボクの手以外にもプリンの容器を掴んでいる手があった。

「あぁ?」

その手の主もボクの手から顔に目を移し、不機嫌そうに唸る。

「これ、俺が先に取ったんだけど」

「いや、ボクが先でしょ」

グッと手に力を入れるが、向こうもプリンから手を引く気配は無い。

「お前、その手を離せ」

「やだ。キミこそ離してくれよ」

「は? 何で俺がお前みたいなちんちくりんの為にプリンやんなきゃなんねーんだよ?」

「プリンならそこに沢山あるだろ?」

「そこは冷えてねーから一番冷えてるコイツがいいんだよ」

「ボクだって冷えたプリンがいい」

互いに譲らない静かな争いは、次第にヒートアップしていく。

「大体、キミはレディーファーストという言葉を知らないの?」

「知るか。食いもんは一発勝負、譲歩なんて言葉は使わねぇ」

ボク達の間から作り笑いが消え、最早本気(マジ)な顔になっていた。
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