Heroic Legend -終章の白-

□第91話 黒き皇帝人鳥達は金曜の闇夜に走る
3ページ/24ページ

「バッフロン、出番だぞ!」

『ブフルルル……』

「ま、まさかバッフロンに乗って行くんじゃ…」

「そのまさかだ!」

「他人のフリして良いですかッ!?」

「駄目だッ!」

「ですよねぇぇぇ!」



…流石はチャンピオン、やる事が大胆過ぎる。


普通にチャリを漕ぐトレーナーと、鼻息も気性も荒いバッフロンに乗って走るチャンピオン。

この組み合わせで注目の的にならない訳は無い。

ヒウンのような大都会なら尚更だ。


街を出るまでは、通行人にパッシャパシャとライブキャスターや携帯で写真を撮られたり、指を差されて好奇な目に晒されたりと、正直泣きそうだった。

ボクはなるべく顔を伏せ、写真に写らないように体勢を低くしながら自転車を漕ぐしかなかった。






























†シッポウシティ


スカイアローブリッジを越え、ヤグルマの森を抜け、ようやくシッポウシティに辿り着く。

ここは相変わらず、レトロな雰囲気で落ち着きのある街だ。


街の北側に位置する博物館へ近付いてきた時、ボクは入口に立っていた人物に気が付く。

その人はソワソワと入口の傍を行ったり来たりしており、誰かを待っているようだった。


ボクはその人に見覚えがある。

というか、さっきまでライブキャスター越しに会話をしていた人物だ。

少し大きな声で、その人の名を呼ぶ。
ついでに手も振りながら。


「アララギ博士ー!」

博士はボクに気が付くと、ソワソワした動きをピタリと止める。

そして、博士の前で自転車を止めると、アデクさんも同じように止まり、バッフロンをボールの中に戻した。


「…フォリア、少し見ない内に随分傷だらけになったわね」

「まぁ…色々ありまして…」

「まぁ、パパやチャンピオン達から話は聞いているから、それだけ大変な思いもしなければならないのよね…」

「でも、ボクがやらなきゃいけない事です。やり遂げたいし、いい加減に決着をつけなきゃいけないですし…」

博士はフウ…と息を吐いて、腰に手を当てた。

「…そうね。なら早速あなたに見てもらいたい物があるの、付いてらっしゃい」

博士はそう言って、博物館の中へと入って行く。

アデクさんも続けて入って行ったので、ボクも自転車を置いて慌ててそれに付いて行った。









博物館に入ると、ボク達はすぐに奥の部屋へ通された。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ