Heroic Legend -終章の白-

□第90話 意思と意志と異志と石
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リュウラセンの塔を出る頃には、既に日は傾き落ちていた。

Nがレシラムに乗り飛び去った後、塔の内部や周辺にいたプラズマ団は何処かへと消え失せており、何処にもいない。

レシラムの復活により嵐のように騒々しかったリュウラセンの塔も、今はいつも通りの静けさに戻っていた。




塔から出るまでは、誰も一言も喋らなかった。

でも、言葉にしなくても分かる。

ハチクさんは『落ち着け』と言ったが、彼も含めてボクもチェレンも直接Nとレシラムを見てしまった。

少なからず、焦りの色は見えている。



そういえば、少しだるくなってきたな…。

足も何だか重たい。

考える事ややるべき事が多過ぎて、病み上がりも重なって少し疲れてしまったのかな…。


「…ア、フォリア」


「…は、い?」

「大丈夫か?」

この声はハチクさんだ。

ボクは軽く笑顔で手を振る。

「はい、大丈夫ですよ。全然。元気100倍です!」



「そのセリフ、ハチクさんに向かって言いなよフォリア。何処見て話してるんだよ?」

「え?」

そうチェレンに言われ、目の前の人物に目を凝らす。

どうやら、傍に立っている木に話し掛けていたみたいだ。恥ずかしい…。

「おぅ…ライフに1000ポイントのダメージ…」


「……失礼するぞ」

ハチクさんは、ボクの額に手を当てる。

「…よくこんな酷い熱で最上階まで行けたな」

手を当てた瞬間、ハチクさんの呆れたような声が降ってきた。

「フォリアから色々話を聞きたい所だが、今は皆疲れている。急いで博士達と合流してから、今日はゆっくり休もう。
何……今はまだ大丈夫だろう。いくら英雄になった者でも、ポケモンリーグは開催されなければ意味が無いのだから」

「それなら尚更、アデクさんに連絡がつけられれば良いんですが……」



「それなら大丈夫だよぉ」

「ベル!」

「帰りが遅いから、心配でつい…」

ここまで走って来たのか、ベルは息を弾ませながらやって来た。

「大丈夫…とは、どういう事だい?」

チェレンの質問にベルは帽子を直しながら答える。

「えーとね…。皆が塔から出て来る少し前に、すっごい火柱が上がったのが見えたの。その後に、今二人が話していたアデクさんって人が駆け付けて来て、今はアララギ博士と一緒にいるよぉ」

「…それなら早い。チェレン…とか言ったかな?」

「はい」

ハチクさんがチェレンに向き直る。
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