Heroic Legend -終章の白-

□第89話 螺旋塔の白き竜
2ページ/21ページ

――――――――…




「お帰り」


その声と共に、オレは静かに目を開けた。

目の前には、オレと同じ顔の人間が一人。


黒髪に澄み渡る快晴の空みたいな目の色。

かつて、コイツの肉体を乗っ取った本来の人格。

「…おぅ」

オレは気まずそうに、フォリアに挨拶をした。



「ありがとう」

何故かフォリアは礼を言ってきた。

「何が?」

「…彼女の身体を守ってくれて」

そう言うと、フォリアの背中から小さい子供が現れた。


「やぁ、初めまして」

この子供もオレ達と同じ顔だ。

それだけで、オレは十分に理解できた。


「…お前がオリジナルか」

「正解だよ、闇のボク」


闇…ねぇ。随分役割を捉えたような呼び名を付けてくれたな。


「…というと、ここはオレがいた場所か……」

辺り一面、光の無い闇の世界。

光が無いのに、オレ達の姿はハッキリと見える。


「ねぇ、どうやってここに来れたの?」

オリジナルが小首を傾げて尋ねる。

「オレにもサッパリ…。お前らが呼んだんじゃねぇのかよ?
お陰でまだ頭が痛い…」

「ボク達は何もしてないよ。
…というか、そんなに強引に引き戻されたの?」

「あぁ…」


…何だよ、この雰囲気。


こちとら消される覚悟で来たってのに、何か拍子抜けだ。



「消される…って、どういう事?」

「何で知ってるんだよ?」

オリジナルの質問にオレは驚くが、コイツは当たり前のように笑う。

「だって、キミ達を生み出したのはボクだ。
心の声が聞こえたって、何ら不思議じゃないさ」

「成る程…納得だ」

「…でも、もう時間が無いね」

「それ程深刻になってるの?」

オリジナルの言葉に、フォリアが焦りの表情を見せる。


「…キミ達が一つの人格として、自我に目覚めた。そして他のボク達を他我と認め始めた。
…間もなく、ボクの意志に関係無く……キミ達は消される」



「…やはりな」

オレはすぐに納得した。

「ボクはこっちの光のボクの励ましに助けられた。外界を恐れるボクを叱り、優しく励ましてくれた。
闇のボクは、自分の運命を受け入れる強さを身に付けて戻ってきた」

「そんな…」

「よせよ、オレはそんなに強くない」

「少しは自覚しなよ、ニブちんだなぁ…」

「お前、口悪いな」

暗闇に、少しだけ笑いが響く。



「さぁ、そろそろ始めよう。ジャルル達が待ってる」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ