Heroic Legend -終章の白-

□第88話 『サヨナラ』とは言わないぜ
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「さぁ、元いた場所へお帰り。ウルガモス、メラルバ」

ポケモンセンターで治療を受け、すっかり回復したウルガモスとメラルバを自然に返す為、ハチクとツバキは再びネジ山を訪れていた。

嬉しそうに母親にくっ付くメラルバを背負いながら、ウルガモスは高い声で鳴く。

まるで、親子共々助けてもらった礼を言っているかのようだ。



燃えるような6枚の羽を羽ばたかせ、切り立った岩が並ぶ山奥へと飛んで行くウルガモス達を、ハチクとツバキは静かに見送る。


「もう、二週間も経つんだな…」

ウルガモス達の姿が見えなくなった所で、ツバキはポツリと呟く。

「しっかし、ミハクのポケモンは凄いのがいるなぁ…。
あんな大火事を、雪崩一発起こして消す程の力を持ったホエルオーがいるなんて…」

「本人は、ただ"跳ねているだけ"と言っていたしな…」

そこまで言った所で、二人は再び沈黙する。




ハンターチームがセッカシティを騒がせてから、既に約二週間。

犯人は全員逮捕され、衰弱していたポケモン達は、すぐさまポケモンセンターへ移送された。

クオンも背中を27cm程縫う深い傷の為に病院へ移送しなければならなかったが、セッカシティに病院は無かったので、以前火傷の手当てをした診療所へ運ばれた。

そして、消火に手間取るとされた火災も、ミハクのホエルオーが起こした《飛び跳ねる》の雪崩によって一発鎮火。


被害を負った道路なども修復が完了し、再びいつもの日常が戻ってきた。





「……ツバキ」

ウルガモス達はいなくなったというのに、いつまでも山を眺めているハチクが口を開いた。

「…何、だよ?」

ツバキも同じように山を眺め、少し気まずそうな表情で答える。


「すまなかったな」

「は? 何だよ…」

突然言われた謝罪の言葉に驚くツバキ。

「色々、辛い思いをさせてしまった」

「へ…? 別に、これくらいの傷…どうって事……」

「いや、その事ではない」

顔や首に貼られた絆創膏や、手足に巻かれた包帯をいじりながら言うツバキ。

それに対し、ハチクは静かに首を振った。


「……今まで、きちんとお前と向き合おうとしなかった。どう接すれば良いか分からない…なんて自分を誤魔化しながら、日々を過ごしてきた。
…お前は、その間にも悩んで苦しんでいたと言うのに、私はその事すら見ようともしなかった」

「…ちょ、何だよ急に……」
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