Heroic Legend -終章の白-
□第83話 ツバキという少年
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あれから数十分後…。
オレ達は何故か街を散策していた。
その理由は、ジャローダがあの観光雑誌に載っていた『ウルガモスの羽サブレ』とかいう名物を食べたい、と言い出したからだ。
何でも、ネジ山近くに住む山の守り神というのがウルガモスというポケモンで、その六枚羽をモチーフにしたサブレらしい。
「…たく、何でオレがコイツの買い物なんかに…」
観光雑誌を片手に店を探しつつ、後ろを歩いてくる二匹に聞こえないように呟く。
後ろの二匹はというと、アレ買ってやコレ食べたいだのと、おねだりモードではしゃいでいた(主にジャローダ)。
【あ、アレ買ってーな! あのグラサン格好えぇわぁ…】
【…美味しそうです】
【なぁー、無視せんといて買ってぇーなぁー!】
「じゃかぁしぃッ! 手持ち少ねぇんだから、サブレで我慢しろ!」
【えぇー…】
「そんな残念そうな顔したって無駄だ。オレはアイツみたいに、お前らポケモンにゃ甘くねぇんだよ」
さっさと行くぞ、とオレは足を速めた。
色とりどりの店から離れるように歩かなければ、コイツらが目移りして煩くなる。
大通りから外れたら、すぐに人気の無い小道が続く。
あちらこちらに曲がりくねりながら入り組んでいるいくつもの道は、まるで迷路のようだ。
途中で何度も立ち止まってマップを見直し、目的の店を目指そうとするが、なかなか辿り着けない。
「…………………」
だんだんとイライラが募る中、いつの間にか静かになっていたジャローダ達の様子が変わった。
【…なぁなぁ】
「……んだよ、今考え中だ」
【イライラするのはよぉ分かるけど、何や変な声が聞こえへん?】
「声?」
機嫌の悪いのを隠しもせずに、ブスッとした表情をジャローダ達に向ける。
二匹はそんなオレなんかに目もくれず、共に同じ方向を見ながら険しい顔付きをしていた。
仕方無く、オレも倣(なら)うように同じ方向を向き、耳を澄ませてみる。
…微かだが、聞こえる。
数人の子供の声と、明らか集まって遊んでいるようじゃない…怪しい音。
「…行くのか…って、アイツならお前らに聞かないで首突っ込んで行きそうだぜ」
気になる様子であったジャローダ達をチラリと一瞥した後、オレはポツリと呟いた。
「…少し遠回りでも、問題無いよな」
誰に言うでもなく、オレ達は音の方向に向かって足を動かし始める。