Heroic Legend -終章の白-

□第82話 心を知る心
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†.






――――――――――…



「…で、残ったのは結局お前らだけか」

床の上で頷くジャローダとオノンドを見ながら、オレは頭を掻く。

「よくもまぁ…オレん所に居続ける気になれたもんだな」

【何や、エラい大人しゅうなったな…。眠ってスッキリしよったんかいな?
ウチらまたてっきり、『出て行け』なんて罵られる覚悟で来たのに…】

「ちげーよ。また痛むのが嫌だから、そういう事…言わないようにしてみただけだ」

【『出て行け』は考えていたんかいな…。せやけど、"痛い"って何処か悪い所でもあるんか?】

ウチに見せてや、とオレに近付くジャローダ。

少し心配そうな表情を見て、オレは咄嗟に後退った。


無論、ベッドの上だったから、見事に床に転げ落ちたが。

「な、何でも無ぇよ…」

【それ、転げ落ちた奴の言うセリフかいな】

さながら仰向けになったフシデみたいな格好のオレを見ながら、ジャローダはクックと笑う。

その後ろにいたオノンドも、必死に笑いを堪えているような声が聞こえてきた。


「…とにかく、外の空気吸ってくる。いいか、オレが大人しくなったからって調子こくなよ。
後、オレが言わない限り、いちいち付いて来なくてもいいからな」

【なーんでやー? 冷たい奴やなぁ…】

「煩い」

変にニヤニヤしながら迫ってくるジャローダをすり抜け、オレは脱兎のごとく部屋を飛び出す。




何故アイツは先程の凄まじい怒りすら失い、尚もオレを気にするのか…。


「まるで、お目付役か教育者みたいだぜ…」

ジムの出入口へと向かいながら、オレはそんな事を一人小声で呟いた。














†.



ジムを出たオレは、再びネジ山の麓(ふもと)へと向かっている。

今日の冷え込みは少し厳しく、しんしんと降り積もる柔らかな雪を踏み締めながら、少し身を震わせた。


「…上着、持ってきてないが…まぁいいか」

既に鳥肌が立っている腕を見つつも、自分の足は"あの場所"を目指して走り続ける。





暫く走り、身体が少し温まってきた頃、オレは目的の場所へとやってきた。

岩陰に身を潜め、辺りの様子を探るように見回す。







いた。




昨日と変わらず、奴は座禅を組んで座っていた。

隣には、昨日と同じツンベアーもいる。



それにしてもこんな雪の日でも、アイツらは毎日こんな事をしているのだろうか…。
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