Heroic Legend -終章の白-
□第80話 敗北
3ページ/18ページ
『ジャルル、ここにいたのか』
【…】
『どうしたのさ、黙っちゃって?』
【…アカン。ウチらと話したらアカン】
『え?』
おかしい。
『何で? ボク達、仲間じゃないか』
【せやな…。それも今日で終いやな…】
『は…何言って…るの?』
オカしい。
何かがおかしい。
『おい、お前!』
『誰!? プラズマ団!?』
『ポケモンは神聖な生き物だ、妄(みだ)りに近付くな!』
『何でだよ! ボクとジャルルは仲間で…友達なんだッ!』
何カガ、オカシイ。
コノ世界ハ…オカシクナッテイク。
『世界は変わったのだ。ポケモンが支配されずに、自由に生きる素晴らしい世界にな!』
『そんなの…誰が決めた!?』
『我らの英雄、N様だ。
あの方は聡明でお優しいお方だ。人間に虐げられるポケモンを救おうと、危険を冒してでもレシラムとの契約に応じたのだから…』
『嘘だ、Nはまだ英雄じゃない!』
『嘘じゃないよ、これが真実だ』
振り返ると、そこにNは立っていた。
満足そうに微笑み、その傍らには巨大な白い竜が控えている。
『もう遅いよフォリア。キミが戦わなかったから世界は変わった。
でもキミが戦っても世界は変わる』
『違う…嘘だ…。世界はまだ、人とポケモンが一緒にいる事を認めてくれている…』
目に涙を浮かべ、下を向いて呟く。
間違っていない。
まだ、世界はボク達を許してくれている。
『…もう遅い。全ては終わった』
僅かな希望すら打ち砕く、Nの言葉。
『キミもポケモンと関わる事は二度と無い。
さぁ、人間の世界へとお戻り』
『嫌…だ』
『そう…そこまで言うなら…。ジャルル、いやジャローダ』
Nの声と共に、目の前に現れるジャルル。
『お別れだ』
【…】
その言葉に、ジャルルは静かに頷いた。
『やだ…嫌だ……行くな…。
行かないでよ…ジャルル…』
【…アンタは負けた、逃げた。この世界から、この理(ことわり)から。
人間から、ウチらポケモンから】
『逃げてない! 逃げてない…のに…』
【サヨナラ】
『…ッ!』
ジャルルの冷たい目に、深い絶望感が襲い掛かる。
心臓が抉られるような感覚と共に、足元がガラガラと崩れていく。
オカシイ。
この世界がおかしいんじゃなくて。
…ボクガ、オカシカッタンダ。