Heroic Legend -終章の白-

□第80話 敗北
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『ジャルル、ここにいたのか』

【…】



『どうしたのさ、黙っちゃって?』


【…アカン。ウチらと話したらアカン】

『え?』


おかしい。


『何で? ボク達、仲間じゃないか』

【せやな…。それも今日で終いやな…】

『は…何言って…るの?』


オカしい。


何かがおかしい。



『おい、お前!』

『誰!? プラズマ団!?』

『ポケモンは神聖な生き物だ、妄(みだ)りに近付くな!』

『何でだよ! ボクとジャルルは仲間で…友達なんだッ!』


何カガ、オカシイ。

コノ世界ハ…オカシクナッテイク。


『世界は変わったのだ。ポケモンが支配されずに、自由に生きる素晴らしい世界にな!』

『そんなの…誰が決めた!?』

『我らの英雄、N様だ。
あの方は聡明でお優しいお方だ。人間に虐げられるポケモンを救おうと、危険を冒してでもレシラムとの契約に応じたのだから…』

『嘘だ、Nはまだ英雄じゃない!』

『嘘じゃないよ、これが真実だ』

振り返ると、そこにNは立っていた。

満足そうに微笑み、その傍らには巨大な白い竜が控えている。



『もう遅いよフォリア。キミが戦わなかったから世界は変わった。
でもキミが戦っても世界は変わる』

『違う…嘘だ…。世界はまだ、人とポケモンが一緒にいる事を認めてくれている…』

目に涙を浮かべ、下を向いて呟く。


間違っていない。

まだ、世界はボク達を許してくれている。


『…もう遅い。全ては終わった』

僅かな希望すら打ち砕く、Nの言葉。

『キミもポケモンと関わる事は二度と無い。
さぁ、人間の世界へとお戻り』

『嫌…だ』

『そう…そこまで言うなら…。ジャルル、いやジャローダ』

Nの声と共に、目の前に現れるジャルル。

『お別れだ』

【…】

その言葉に、ジャルルは静かに頷いた。


『やだ…嫌だ……行くな…。
行かないでよ…ジャルル…』


【…アンタは負けた、逃げた。この世界から、この理(ことわり)から。
人間から、ウチらポケモンから】

『逃げてない! 逃げてない…のに…』










【サヨナラ】


『…ッ!』

ジャルルの冷たい目に、深い絶望感が襲い掛かる。

心臓が抉られるような感覚と共に、足元がガラガラと崩れていく。



オカシイ。

この世界がおかしいんじゃなくて。









…ボクガ、オカシカッタンダ。
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