Heroic Legend -終章の白-
□第80話 敗北
2ページ/18ページ
†
セッカシティ。
そこは空に煌めく雪の花の名が取られ、冬は一面が銀世界となる街。
傍には湿原などの湿地帯が広がり、湿気を好む様々なポケモンが生息している。
そして、この街に古くから伝えられる二人の英雄と竜の伝説は、人々の中で静かに語られてきた。
街の北に聳える塔は、その伝説の中心となった『リュウラセンの塔』であり、伝説の竜はそこに眠っているのだと言われている。
そんな街の平和を守るのはセッカシティジム。
リーダーはかつて、大スターとまで呼ばれた有名な映画俳優。
勝負には熱く、時に冷静に挑戦者達の力量を見極める。
その氷の技は大きな壁にもなり、あるいは強力な刃となって、彼らを試そうとする。
「―――――……だって」
【『だって』…じゃないだろ。お前はここへ何しに来た? 観光か?】
「さーせん」
ここはセッカシティのポケモンセンター。
今し方休憩中だったボクの手には、『セッカ満喫! ぶらり氷旅』というタイトルの観光雑誌がある。
回復が終わったポケモン達は、それに読み耽っていたボクに説教をしに来たのだ。
「ちょっと暇だから読んでただけだよ。
さぁ、行こうか」
【何処へだ? 外はもう暗いぞ】
「…リュウラセンの塔」
【プラズマ団…か】
即答した答えに、ガルダは険しい表情になる。
【ねぇ、今の所何の動きも無いなら、明日行きましょうよ。
今日はガルダの言う通り、遅いんだし…】
「そうしたいけど、もしライトストーンが見付かった話が本当なら…!」
【まぁ、落ち着きぃや。アンタもウチらも皆疲れとる。
焦るのは分かるけど、まだレシラムが目覚めた訳や無いんやろ?】
「それは…そう、だけど…」
【せやったら、休もか。休める時に休まんとアカンで】
ジャルルは優しく諭すように言うので、ボクも渋々とそれを承諾する。
本当は一刻も早く塔へ駆け付けたい。
ライトストーンを奪還し、レシラムの目覚めを阻止したい。
…でないと、この地方はとんでも無い事になってしまう。
ザワザワと落ち着きの無い胸を擦り、とりあえずセンターにある宿泊所へと向かう。
この日は殆ど寝付けず、浅い眠りを何度か繰り返すだけだった。
そして、眠りの中で何度も見る悪夢。
それがボクを苦しめた…。