Heroic Legend -終章の白-

□第77話 揺らぐ価値観
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「と、言う訳で……」

【ゲットしました、ジェットバッジ!】

【…まぁ、オレがいたから当然だな】

辛勝ではあったが、無事にフキヨセジムを攻略したボク達は、意気揚々とネジ山を目指して歩いていた。

ただ一匹を除いては。


【…はぁ】



【…なぁ、さっきからブリッツが"あんにゅい"な表情をしとるで】

【本当だ。アックスより活躍したのに、超ブルーモードじゃない】

ポケモンセンターから出てきた時からボールに戻らず、トボトボと歩くブリッツ。

そんな彼を見ながら、ジャルルとランプルは声を潜めて会話している。

【ちょっと、ボクだってココロモリに一撃与えたじゃないですか…!】

【あぁ、"一発"だけな】

アックスの反論に、ジャルルが"一発"を強調して言う。

【それも、あの変な踊りの後に……く…ぷぷ……】

ランプルも一生懸命笑いを堪えている。


そりゃそうだ。

フウロさんのココロモリを笑わせた位の阿波踊り(アックス曰く《竜の舞》)だもんな。


【…あの技は、父に習った技なんです!
あの技で力を高め、どんな強敵をも打ち砕いてきたんですよッ!】

うん、腹筋的な意味でね。


…しかし初代アックスも、あの踊りで戦ったのか。

オノノクスが阿波踊りをしている様子を想像してみるが、色んな意味で恐怖を覚えて僅か5秒程度で止めた。



未だに言い争いをしているジャルル達をスルーし、ボクは後ろで歩いているブリッツに話し掛けた。

「ねぇ、ブリッツ」




【………………何?】

かなりの間を置いて返事が帰ってくる。

この様子からして、相当な落ち込みようのようだ。


「…どうして火炎放射が撃てなかったか…。
キミは、その原因分かる?」

ブリッツはピクリと耳を動かし、少し震える。

「いや、怒ってないから安心してよ。
寧ろ、分からないんだ。原因が何処にあるのか…」

【…それは……】

ブリッツはボソボソと何かを呟いたが、

【…何でもない】

と言って、再び黙り込んだ。




…参ったなぁ。

ボク、こういう時…何て言ったらいいか…。


ベルみたいな勘の良さや包容力は無いし、チェレンみたいなポケモンの生態などについての知識もまだまだだし…。

記憶が戻ってから自他共に認める程、こんなに変わったし…。

勿論悪い意味で。


考えれば考える程、自分もネガティブ思考になってしまう。

いかんいかん。
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