Heroic Legend -終章の白-

□第75話 白星団幹部のエルダ
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「ん? 何だ貴様?」

「いや…別に怪しい者じゃ…」

「用件を言え。内容によっては、通してやらない事もない」

階段を走っていた最中、男に行く手を遮られた。
白いベレー帽に白い服、プラチナブロンドの髪。

何処かで見覚えのある姿だ。


「…どうした? 用件が無いのなら帰れ。抵抗するなら、実力で…」

「う…ぅう…ぐず…」

「!?」

ボクはその場で顔を押さえて、嗚咽にも似た声を出す。

「お…おい…」

「ぅ…く…。何で悲しい事を言わなきゃいけないんですか…。
大切な家族の命日なのに…ボク……ボク…。酷いよ…」

「お前、泣くな! おい!」

男の声を無視し、ボクはその場にうずくまって地面に突っ伏す。

「お兄さんは…ボクとあの子との時間を……ぅう…。
あの子は…最上階の近くにある、あの場所で待っているのにぃぃ……ッ!」

悔し涙を流すように歯を食いしばり、プルプルと震えていると、男が観念したな声で言った。


「わ…分かった分かった!
通す! 通すから泣くな! ヒトモシ達が逃げる!」

「お兄さん、ヒトモシを見に来たの?」

ボクは嬉しそうな表情で顔を上げると、男はコクリと頷いた。

「まぁな。ここのヒトモシは我々の計画に……いや、何でも無い。
早く行け。墓参りしたら、さっさと帰るんだぞ」

「はーい」

ボクはニコニコと男にお辞儀をしてから、再び階段を上り始める。


だけど、男は見ていなかった。

彼の背中越しに、ボクが静かにほくそ笑んでいたのを。







「…ぷぷ、こんな安い芝居に騙されるなんて…」

男の姿が完全に見えなくなった後、ボクは口元を押さえる。

【アンタね…】

ランプルが呆れたように呟いた。



そう。

さっきのボクの行為は全て嘘だ。

少しオーバーアクションにしてみたが、こんなにすんなり通してくれるなんて思わなかった。


さっきの男の良心に漬け込むようなやり方のように見えるが、そうじゃない。

階段を上っている途中で思い出した。


あの男の服装は、以前会った白星団の団員のものだ。

(『我々の計画』…ヒトモシがいなくなった原因は、恐らくそれにあるかもな…)

男の言葉を思い出し、一人で思考に耽る。



そうしている間にも、最上階だと思われる出口が近付いてくる。

向こうは朝だからか、暖かい日の光が見えていた。

「やっと…着いた」

少しずつ駆け足で上る階段。
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