Heroic Legend -終章の白-

□第73話 悲痛の訴え
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『オレは許せなかった。
自分を犠牲にした兄を蔑ろにし、何の罪も無い腹の子の首を削ぎ落とすと聞いた時、オレの中には耐え難い程の憎悪が溢れかえっていた』

【アーテルは我を求めた。
我もまた、アーテルの復讐心に突き動かされ、あの屑との契約の鎖を引き千切ったのだ】

『ゼクロム達の力で処刑場から逃げ出す事ができた。
…が、兄は途中で病状が悪化。大量の血を吐きながら、レシラムの背の上で死んでいった。その妻は矢の流れ弾に当たって即死。
何とかこの部屋まで逃げ切れた時には、オレとイザヨミ…ゼクロムとレシラムだけになっていた』

まるで昨日の事を思い出すかのように呟くアーテル。

そして、話は終盤へと差し掛かる。


『イザヨミはそこで産気づき、子供をここで産み落とした。
…が、元々身体が弱い彼女は、度重なる仕打ちに耐えられず……オレの、腕の中で子供を抱きながら死んでいった。
…とても安らかな死に顔だった。あんな目に遭いながらも、"幸せだった"と呟きながら…な』


【酷い…】

ランプルは涙を流して話を聞いている。


…もし、アーテル達があの場で処刑されていたら。

イザヨミさんの子供も無惨に殺され、当然…ボクも父さん達も存在しなかった。


身体が弱かったが、意志は強かった彼女…。
何処かトウヤと似ている、と考えた。



『大切な家族を一遍に、しかも自分の甥達に殺された。
オレは複雑な気持ちを抱き、身を引き裂かれるような苦しみによって、次第に壊れていった。
…元々、昔から負の感情を抱えてたから、それに拍車も掛かった。
…そして決意した。この復讐を』

【アーテルの負の力は強大で、我も自我を失いかけた事がある。
そして、アーテルと我は『禁じ手』とされてきた禁忌を犯し、互いの魂で契約を結んだ】



「その契約…って、ボクに掛かっている奴と同じ奴?」

『いや…』とアーテルは静かに首を振る。

『アレはその契約の派生版だ。オレ達の場合、魂を直接的に結び付け、一つに融合するといったもの。
意思疎通、身体的強化、魂の状態で他人への憑依が可能となり、実際…憑依しているお前もオレ達が望めば操れる。
…最も、そんな事はしないけどな』

「サラッと恐ろしい事を言うなよ」

【お前のようなチビを操ったって、何の得にもならないだろう?】

「お前、性格悪いな。一応、伝説の神様だろ?」

【それは、お前達人間の勝手な解釈でしかないだろう】
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