Heroic Legend -終章の白-
□第73話 悲痛の訴え
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「アーテルが…イッシュ国を、滅ぼした…だって?」
【嘘だろ…】
ボク達は、アーテルが発した言葉に驚愕した。
中には否定に近いような事を言う者もいたが、アーテルは静かに首を振る。
『…本当だ。オレは自分の復讐…ただそれだけの為に、国を丸々一個…焼き払った』
アーテルは自嘲の笑みを作ると、淡々と話を続ける。
『伝説では、最初の戦いはどっちつかずで互いに剣を収め、無駄な犠牲を増やさないようにする事で争いは終結した。
それから双子の王子は二人で国王となり、共に話し合いながら平和な国を作っていった。
…そう、ここまでは平和だった』
ボク達は、黙ってアーテルの話に耳を傾ける。
『白き英雄である兄に双子の子供が産まれ、オレにも愛する妻ができた。
やがて十数年経ち、兄の子供が王位を継いだ。当時は、兄もオレもアイツらを信じてそれを譲り渡した。
アイツらなら、オレ達をも越えるような立派な王になると…信じていた。
………なのに…!!』
穏やかな表情から一変、アーテルの顔に憎悪の色が浮かび上がる。
『双子は英雄の力を自らの欲望を叶える力に変え、あちこちの国に戦を仕掛けて悪戯に民を死なせていった。
双子に継がせたゼクロムやレシラムの嘆く声を聞き、兄は双子を止めようとした。
…だが、殆ど無敵の力を手に入れたも当然の双子は父親である兄の言葉を聴くどころか、兄やオレを殺そうとした』
いつの間にかアーテルの横に、ゼクロムが立っている。
いつも堂々としている彼の姿は何処にも無く、悲しみと怒りに満ちたような表情をしていた。
『既に不治の病に冒されていた兄は自分の妻、オレと妻…イザヨミという女性と共に牢獄へと入れられた』
(イザヨミ…あの夢に出てきた白髪の女性の事か…)
『イザヨミの腹には子供がいた。
兄は、自分が犠牲になるからと双子にオレ達を逃がすように懇願した』
【…で、逃がしてもろうたんか?】
ジャルルが真剣な面持ちで言うが、ゼクロムが嘲笑めいた笑いで言った。
【あの屑共がそんな情けを持った…とでも思ったのか?】
「まさか…!」
『そう…そのまさかだ。双子の国王は、笑いながらこう言った。
"反乱分子の首を削ぎ、その女の腹にいる子供も引きずり出して、首を削ぎ落としてやる"…と。
…その直後、オレ達は公開処刑で民衆の前に姿を晒された』
話を聞きながら、ボク達は怒りに身を震わせた。