Heroic Legend -間章の灰-
□第68話 墓参り
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「…来たよ、アックス」
形が不揃いで塔のように積まれた石の前に立ちながら、先程買ってきた花を供えた。
(こんな暗い場所だから、明るい色を選んできたんだよね。
キミには奥さんもいるし…)
赤や黄色といった花を見ながら、一番上に乗っている二つの頭蓋骨を交互に撫でる。
【…無事にビリジオンの試練を乗り越えたようだな、黒き英雄】
「コバルオン…」
後ろから野生ポケモンを連れ、青い体の四肢を持つポケモンがボクに話し掛けてきた。
「ボクはまだ英雄になると決めた訳じゃ…」
【いや、お前が英雄になる事は絶対。
それが…お前の運命であり、英雄の一族に生まれた宿命だ】
「拒否権無しかよ…」
項垂れながら呟く。
コバルオンは後ろにいたポケモン達を下がらせ、アックスの墓の前に立った。
【…初めてお前の名を聞いた時、私は驚愕した。
こんな子供が英雄になるのか…とな】
「ボクだって…英雄の末裔だって事を知って、酷く驚いたよ」
【…当然だな。しかし、何故私が英雄の存在を知っていたのか、疑問には思わないのか?】
「まぁ、そりゃ…ね」
コバルオンはゆっくりと頷き、ボクの顔を見る。
【…お前の父、ライラックは…私の友であり、奴がお前を守(も)り人に選んだからだ。
そして、その試練を私達が出すように…と頼んだ】
「父さんが…?!」
ボクは驚いて、持っていたお供え用の『怒り饅頭』を、ポトリと落としてしまった。
【ゼクロムと英雄の魂は、子から子へと受け継がれていく。
お前達双子が生まれた時、お前の方へと魂が継がれた。
魂を受け継いだ者は英雄の意志を聞き、他の者…ましてや悪の心を持つ者にゼクロムを召喚させぬようにと、その継承者に守り人の任を与え、また継承者自身が英雄にならぬように、能力(チカラ)の開花を封印した】
「でも、父さんやトウヤはポケモンと普通に会話していた。
現に、ボクだって…」
【能力は"真に悪意無き心を持つ者"と英雄が認めれば封印が解け、心に世界を脅かす程の悪意が僅かでもあれば、能力は永久に開花しない。
…お前達の持つ能力は使い方次第で、世界を救う希望にも…世界を滅ぼす絶望にもなるからな】
…確かに。
このポケモンと話す能力も、白星や黒星みたいな奴らが使えば、いとも簡単にポケモンが捕まえ放題になる。
決して使い誤ってはいけない能力なんだ…。