Heroic Legend -間章の灰-

□第67話 ボクはいつも通りに
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怪我の治癒による反動現象が、とうとう顔や手にまで現れるようになってしまった。

左目はもう一人の自分の影響もあってか…群青色から金色に変わり、左手の痣(アーテルが言うには『英雄の証』らしい)も手首までに広がった。

お陰で、左手首にリストバンドを買って巻く羽目になってしまった。

左目を隠したいが為にピンを外したが、僅かに前髪がそれを隠していないので意味が無い。


周りには"前回の実験の影響で…"という理由で何とか誤魔化しているが、本格的に調べられたらやがてはこんな言い訳も通じなくなるだろう。


(極力単独行動しなきゃな…)

「んじゃ、オレはフォリアのママさんに頼まれてるから、ホドモエまで送って行くけど、二人はゆっくり休んでくれよ」

「あぁ、すまないな」

「ジムリーダー達やサブウェイの人にも、ちゃんと挨拶してこいよ」

「分かってるのな。じゃあ行くぞ、フォリア」

「え、あ、了解っす」

慌ててカバンをひっ掴み、にこやかに見送る二人に手を振りながら、ボクとクロードは彼らの病室を後にした。






病院から出ると、先日の事件がまるで嘘のような賑やかさが戻っていた。

遊園地も通常通りに営業しており、家族連れや恋人達が楽しそうに入口に向かっている。


「…どうしたのな?」

「いや、家族って良いなぁ…って思ってさ…」

意識不明で眠り続ける父さんや、安否すら分からないトウヤの事を考えると、胸が締め付けられる。

「オレさ…里帰りのついでにお前をホドモエへ送るんだよな」

「…あ、そっか。フキヨセへのルート内だからか」

「そうそう。でも、ちゃんと送るから、そこは心配ご無用なのな!」

任せとけ、という風に胸を叩くクロード。
それから家族連れを見てから、少し羨望の表情に変わった。



「…オレ、親がいるフォリアが少し羨ましいのな」

クロードの呟きに黙っていると、再び彼の口が動く。

「オレの親、オレのちっちゃい頃に飛行機事故で、あっという間に逝っちゃってさ…。
姉ちゃんは、祖父ちゃんや親父の跡継いでパイロットになったけど、オレは何して良いか…全然分からなかった」

そんな時だよ…と言って、スワンナの入ったボールを見つめる。

「TVで水戸○門観ててさ、オレも世直ししたいって思って、国際警察に入ったのな」

「…」

ボクに感動秘話を語っているつもりだろうが、このセリフで少し笑いそうになってしまう。
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