Heroic Legend -間章の灰-
□第67話 ボクはいつも通りに
1ページ/12ページ
黒星団との激闘から三日、持ち前の治癒力で動き回れるまでに回復したボクは、退院の挨拶をしにネクの病室へと来ていた。
ネクの身体は至る所に包帯が痛々しく巻かれ、骨折した腕と足はギプスで固定されている。
ボクは彼の見舞いの品である果物を、同じく病室を訪れていたヒョウガやクロード達と摘みつつ、様々な話をしていた。
「ボスに黒星達の事を聞かされたんだけど、あのサザンドラ…危険な薬物実験で強化された奴で、あの戦いはその薬物の効果を試した実験なんだとさ」
「実験…」
ユキメノコに切ってもらった兎型リンゴを片手で食べながら、ネクは話す。
「プラズマ団の事ばっか調べてたから初めて知ったけど、本当に許せない奴らなのな…!」
果物の匂いに誘われたエモンガに葡萄を食べさせながら、クロードが信じられない…という表情をした。
「…ねぇ、ボクと一緒にいたメタモンはどうなったんだい?」
「あぁ…。ソイツも同じように薬物実験を受けた影響で、様々なポケモンに変身できるように改造されていたから、今はサザンドラと一緒に特総部で治療を受けているってさ」
「そうか…」
メタモンの無事に、安堵の息を漏らす。
彼らの調査によると、ポケモンの生態実験を行っているのは、白星団だという話らしい。
そうして強化されたポケモンや実験データを、高額で企業やコレクター達に売りつける…といった非人道的な犯罪行為を繰り返している。
それを聞いていると、腸が煮えくり返るように怒りが沸き上がってきた。
「どこまでも腐った連中なんだよ…アイツらは」
拳を固く握り、ヒョウガが吐き捨てるように呟いた。
「ネクが動けない今、オレもなるべく白星団の情報を集めるのな。
何かよく分かんねーけど、プラズマ団も最近は大人しいし…」
そのプラズマ団のトップと共同戦線を張った…なんて言ったら、三人はどんな表情をするのだろうか…。
そんな事を考えながら、ボクは三人の話を聞いていた。
(Nが『英雄になる素質はボクが誰よりも高い』って言っていたのは、まさかキミも知っていたのか…?)
未だに自分に知らされた秘密を信じる事ができない。
アーテルも先日の一件で、やけに静かになってしまっている。
けれども、それよりも恐れている事が、自分の身体に異変となって現れてしまっていた。
「…フォリア、左目や髪の他に怪我や実験の影響は無いか?」
「あぁ…平気」