Heroic Legend -間章の灰-

□第66話 記憶の古城
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頭の中がゴチャゴチャで整理がつけられない。

混乱しながら荒々しく階段を上り、ボクは滅茶苦茶に怒鳴った。


「黒き英雄? 末裔? 神子だって!?
意味不明な言葉ばかり並べて、何なんだよ!
それにアーテル、その格好何? 随分手の込んだコスプレですこ…」

アーテルの目の前に来たところで、ボクは見えない壁にぶつかって尻餅をつく。

「ぶざけるな、このバカ野郎…!」

悪態をつきながら壁を乱暴に蹴ると、向こうではアーテルがバツが悪そうな表情をしていた。


「…すまなかった。今まで黙ってて」

「それでボクが許すとでも思った?」

床にどっかりと座り込み、胡座をかいてアーテルを上目で睨み付ける。

「勿論、お前の性格上ではフルボッコレベルだろうな」

「だったら"おバカ"なボクに分かるよう、1…いや0から説明してもらうよ!」

おバカ、を特に強調して唸る。

真実が何であれ、本当の事を話してもらえないのが、何だかバカにされたような気がして腹立たしかったのだ。


静かな空間で、一人嵐のように荒れ狂っていると、重々しく威圧感のある声が何処からともなく聞こえてきた。

【…五月蝿いチビだな。
話もまともに聞けないのか?】

アーテルの後方で黒い霧が発生する。

それは青白い光を発しながら、やがて巨大な黒い生き物の姿に変化した。


「…」

突然の登場に、ボクは間抜けな表情で口をポカンと開けている。

雄々しく逞しい黒い巨体に青白く発光する巨大な尻尾。
赤く縁取るような灰色の目で、可笑しそうにボクを見下ろしていた。

【アーテル、こんなチビが新しい継承者か?
笑わせるなよ。10年前の勇ましさの欠片も無いじゃないか】

「だが、フォリアの能力が現在の俺達一族の中で一番強い。
後は、コイツの理想次第で全てが決まるんだよ」

「本人の前で勝手な事言うな!
能力だか理想だか何だか知らないけど、何の説明も無しに話が進められるのは、凄く納得がいかないんだよッ!」

腕を組み、怒りの矛をしまえずに怒鳴り散らす。

黒い生き物はそんなボクを見て、呆れるように言った。



【お前…今のやり取りとか、そこの姉ちゃんの挨拶を見て何も分からないのかよ?】

「…バカでも分かる」

【だったら納得しろ。
お前はコイツ…アーテルの子孫に当たる存在であり、黒き英雄の末裔だ。
お前がずっと知りたがっていた謎が解けて、良かったじゃないか】
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