Heroic Legend -間章の灰-
□第65話 無表情の鳥と戦場の夢
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「…ッ!」
目を開けると、辺りは火の海に包まれていた。
その中で戦い合う男達。
武器のぶつかり合う金属音。
人の肉が斬られる嫌な音。
しかし、血の臭いや炎の温度を感じない為、リアルさが欠けている。
そう、まるで昔の戦争映画を見ているような感じだ。
「何だ…何なんだ…ここ…?」
呟きながら、ぼぅっと戦いの様子を見ている。
先程から矢や武器が飛んでくるが、全てボクの身体をすり抜けていく。
「まるで幽霊みたいだな…」
そう言いながらボクの目に、ある二人の男性が移った。
他の戦っている兵士達と比べ、立派な服と防具を身にまとっている事から、あの二人が互いの軍の先導者なのだろう。
何者をも寄せ付けない雰囲気に、傍観者であるボクも圧倒されてしまう。
しかしその雰囲気は、二人だけの物では無かった。
炎で赤く染まった空を見上げると、二体のドラゴンも激しい激突を繰り返している。
何だか、あの二人の戦いに反応して戦っているような感じだ。
ドラゴン達を暫く眺めていると、ふとNの話を思い出した。
かつて真実と理想を求め、争い合う双子の英雄に味方をするように争い合った二体のドラゴン。
白く、細い、鳥のような体を持ち、双子の兄に味方をした『真実』を司るドラゴン…レシラム。
黒く、逞しい、まさしく竜のような体で、双子の弟に味方をした『理想』を司るドラゴン…ゼクロム。
「じゃあ、ひょっとして…あの二人が、双子の英雄…?」
剣を交える二人の容姿は、双子と疑ってしまう位に違っていた。
兄であろう白と青の衣装を着た男性は、癖のある白髪をいくつかに分けて纏め、レシラムと同じようなサファイアの瞳。
対する黒と赤の衣装を着た男性は長い黒髪を一つに纏め、短髪になる前のボクに似ている。
そして、その顔を見た瞬間、ボクは時が止まったように固まった。
その顔は成人した男性の顔だが、その赤い瞳に見覚えがある。
ボクは驚きのあまり、いつの間にかその人物の名前を口にしていた。
「………アーテル…?」
似ていた。
いや、間違い無い。
今のは―――――。
ボクの意識は再び闇に呑まれた。
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目が覚めると、白い天井が視界に飛び込んできた。