Heroic Legend -間章の灰-
□第64話 暴竜 VS 暴竜
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それと同時に、頬に鋭く強い痛みが走った。
ボクは手で頬を触り、呆然とその生き物を見ている。
【…何、バカな事しているんですか?
一人で、こんな危ない事に首を突っ込んで行くなんて…っ!】
その生き物、ポケモンはプルプルと激昂して震えている。
ゴツゴツとした苔のような色をした皮膚に円(つぶ)らな赤い目、二本の鋭い牙は顔の横に生えている。
可愛いのか逞しいのか分からないような姿は、まるで小さな怪獣のようだ。
そしてその声は、その口調は、聞いた事のあるようなものだった。
「アッ…クス……?」
自然とその名前が口から零れ落ちる。
姿はキバゴの時の名残があったが、始めは誰だか声を聞くまで分からなかった。
彼はその小さな瞳を濡らし、ボクの無事を確認するかのように両手でボクの顔を触る。
そして、先程叩かれた頬を触る。
【…お相子です。凄く痛かったんですよ…あなたに叩かれたのは…】
頬を触ってから、自らの胸に軽く手を置く。
それを見た瞬間、ボクは現実に戻ってきたような気がして、自然と涙が溢れ出した。
「…ぁ、ボク…」
【あなたがボクを叩いた時の気持ち、何となく分かりました。
…きっと、こんな危ない事をしてほしくなかった。
多分、そうなんですよね…?】
「…ボクはキミを…。
あんな酷い事をしたのに…何で……」
【……それで、嫌いになれって言われても、無理ですから】
「…アックス…!」
そう言いながら、オノンド…アックスは乱暴に自分の涙を拭い取ると、再び立ち上がろうとしているサザンドラを見据えた。
「アックス、無闇に傷付けては駄目だ」
自分も涙を軽く袖で拭ってから、サザンドラを見る。
【分かっていますよ。
あの子は、ただ苦しんでいるだけなんですよね?】
「え…何でそれを…?」
【……声、とても懐かしい声が、ボクに教えてくれたような気がしたんです】
それを聞いて、ボクはピンと来た。
やっぱり、あの声の正体は"彼"なんだと。
…不思議な事もあるんだな。
「…って、呑気に構えている場合じゃない…」
【フォリア、怪我しとらへんか!?】
急いで駆け付けてきたジャルル。
そう尋ねられ、ボクは素早く頷く。
【まったく…ヒヤッとしたで…。
アックスが助けてくれへんかったら…って、進化しとるがな…】
【え…? あれ? いつの間に?!】
「気付くの遅っ!」