Heroic Legend -間章の灰-

□第63話 真-マコト-の声
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「シャンデラ、ムウマージ、相手は悪タイプだが…頼んだぞ」

二体はコクリと頷き、彼らは無言でサザンドラに戦いを挑みに行ってしまった。


【…ネク】

泣きそうな声を上げるチルタリス。


暫くして、向こうから激しい戦闘の音が聞こえてきた。




けれど、ボクにとってはそれどころじゃない。

耳を塞いでもすり抜けて聞こえてくる声に怯え、必死に聞かないようにするので精一杯だ。


聞かないように。

聞こえないように。

自分を、守ろうとして。












"――――否定するのか?"



「え…」

不意に聞こえてきた別の声に反応し、顔を上げる。


すると、いつの間にか周囲の景色は白い靄(もや)のようなものに変わっており、異質な空気を纏っていた。


変だ。

そう思えるのに、何故か安心してしまう。

先程聞こえてきた声の時に、もうあのサザンドラの声は聞こえなくなっていた。

もしかしたら、それから逃げた事に対する安堵感かもしれない。



"否定するのか?"


見えない声は再び尋ねてきた。

今度は低い声で、若干哀愁を帯びたような雰囲気だ。
男性の声だが、アーテルよりは若干高い。


(誰…?)

声にならない声で、ボクは尋ねる。


"お前は、否定するのか?"

声はそれしか尋ねてこない。

(何を…否定するんだ?)


"…分からないのか?"

質問を質問で返され、思わずムッとする。

分からないから質問しているんじゃないか。
いや、ボクも質問を返す形になってしまったけど…。



"お前が否定するのなら、あの者の『真の声』は誰にも聞こえないだろう…"

(真の…声?)

"聞け。お前は耳を塞いではいけない。
『心の耳』は聞こうとしている"

(何…言っているんだよ…)

訳が分からなくなり、頭を垂れる。

それを元気付けるように、ふと…誰かに頭を撫でられる感覚がした。




"……大丈夫だ、お前ならできる。
…お前は、本当は強い子なんだよ"

(強く…ないよ…)

"いや、強い。
…オレは幼い頃からお前を見てきたから分かる"

(幼い…?)

その言葉に疑問を持った時、声は優しげな温かさを含めたものに変わっていた。



"ありがとう、思い出してくれて。
また、墓参りに来てくれ…オレの大切な家族よ"


(…まさか、キミは――――っ!)

頭の感覚が消え、ハッとなって顔を上げる。
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