Heroic Legend -間章の灰-
□第57話 急行、サブウェイ
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しかし、その問い掛けに答える事無く、声の主は音を立てて膝を崩した。
ジャルルが慌てて音のする方に移動すると、全員も同じように近付く。
「チッ…見えねぇ。ライラ、そこ照らしてくれねぇか?」
黒髪の少女が隣にいたポケモンに頼むと、ライラと呼ばれたポケモンはコクン…と頷いて、自分の尻尾をジャルル達に近付ける。
そして、照らされて現れた姿に、彼女ら息を呑んだ。
【こりゃ…かなりやられたモンだぜ…】
「…」
ゾロアークやNでさえも表情を険しくさせ、床に倒れている黒髪の短髪の少女を見た。
本来黒髪だった一部分の髪は先程よりも色素が抜けきり、全体の半分は既に灰色に変わっている。
後頭部の辺りに乾いた血がこびり付いているが、そこにあった筈の傷は何故か塞がりかけている。
【フォリア、しっかりしぃや!】
ゆっくりとジャルルが抱き起こすと、フォリアは微かに呻き声を上げた。
「…痛い…」
【当たり前やっ! こんなんなるまで…アホちゃうんか…】
顔や腕からの出血もあり、左目は青い痣までできて思うように瞼を開く事ができない。
それに加え、瞼からも出血していた。
「…ごめん、逃げられた。
皆…連れてかれて…」
痛みに顔をしかめつつも、フォリアは腹を片手で押さえながら立ち上がる。
ジャルルはそれを支えながら、心配そうに尋ねた。
【追い掛けるんか?】
「追わなきゃ…。絶対取り返す…!」
「おい、バカ言ってんじゃねぇよ。
お前一人でできるのか?」
黒髪の少女がフォリアに向かって言う。
「やる。無理でもやる…」
「と…とにかく応急処置だけでもしないといけないわね…。
タブンネ、その子と一緒に救急箱を取ってきてもらえる?」
【たぶんねー】
かなり不安な返答を返しつつも、女性の隣にいたタブンネはライラを連れて、来た道を戻った。
辺りは一瞬だけ暗くなったが、女性達の中にいたポケモンが素早く頭の花から光を放ったお陰ですぐに明るくなる。
「サンキュ、リディア」
【ライカ様は暗い所があまり好きではありませんので。
…それに、この停電の原因も調べませんと…】
リディアと呼ばれた植物の女性型のようなポケモンは、辺りを見回しながら言った。
※フォリア視点
体のあちこちが痛い。
目も何だか変な感じだ…。
【…フォリア、もう大丈夫なんか?】
ジャルルがボクの顔を覗き込みながら、そう尋ねてくる。