Heroic Legend -間章の灰-

□第57話 急行、サブウェイ
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※第三者視点



【な、何やっ!?】

【落ち着け、ただの停電だろ】

突如起こった事態にあたふたとするジャルルに、ゾロアークが呆れたように言う。

管理室の凄まじい物音と叫び声の後に、何かが切れるような音と同時に停電が起きる。
恐らく、何らかの方法で意図的にこの事態を招いたのだろう…と、Nは一人黙々と推測していた。

今夜は雷雲も雨雲も無い、星空が見える程の晴れ模様だ。
ポケモンセンターは今日も通常通りの電力しか使用していない。

ここや天気に原因が無いとすれば、残る可能性は"外"しか無い。


(暗闇に紛れて逃走を図るつもりか…)

おおよそ考え付く事を思った時、自分の後方が急に明るくなった。

振り返ると、自分以外に人がいた。
人数は三人。脇にポケモンを一体ずつ従えている。

その中の一体が、この光を発していた。


「おい、ポケモン泥棒がこっちに来たよな?」

黒髪の少年…に見えるが、ロングのサイドテールで辛うじて性別を間違えられない少女がNに尋ねる。
Nは何も言わず、少女の言葉を無視した。

「おま…シカトすんなよ。
俺が誰だか分からねぇのかよ? 昼間会ったろ?」

【昼間…? あぁ、ヤケにあの女を応援していた女か…】

その声を聞いたゾロアークが、思い出したように呟く。


「お前…まさか、ポケモン泥棒の仲間なのかよ…?」

少女が声を鋭くし、その手にボールを握りながら再度尋ねる。
それを制したのは、もう一人の女性の声だった。

「違います。この人はあの集団にいませんでした…」

少し疲れたような声は頼り無さげだが、きっぱりとNの無実を証明している。

「じゃあ、今の騒ぎ…何なんだよ?
ライカはこの有り様だし…」

少女は自分が担いでいるもう一人の少女を見て呟いた。
この非常時に静かに寝息を立て、見事に熟睡しきっている。

「とにかく、管理室へ急がないと…。
あなた達も一緒に行動した方が…」

女性がN達にそう言いかけた時、




「ここじゃない…」


と、弱々しい声が彼らの後方、丁度管理室の辺りから聞こえてきた。

声の主はこの暗闇に慣れきっていないのか、あちこち壁にぶつかる音が起こりながらも、明かりのある自分達の方へと向かってくる。

その苦しげな息遣いは、今にも倒れてもおかしくない程に乱れていた。


【この声…フォリアなんか?!】

声を聞いたジャルルは、心配そうに声の主に尋ねる。
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