Heroic Legend -間章の灰-
□第55話 似ている二人
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ゾロアークは話が終わると、ふてくされたように頭を掻いた。
【チッ…余計な過去まで話しちまった。
あの女がどんな奴かを話すつもりだけだったのに…】
「…」
【…別に、軽蔑しても構わねぇんだぞ。
あの時、オレは…】
ゾロアークはそう言いながらボクを見ると、ギョッとしたように目を見張った。
【おま…っ、何泣いてんだよ!】
「…」
黙ってティッシュで鼻をかむ。
【お前、何処に泣く要素があるんだよ?
…まさか、このオレに同情なんてクソみてぇなモン、向けてんじゃねぇだろうな?】
「…言葉が汚いよ」
【うるせぇ】
「……悔しいんだ」
【あ? 何でだよ?】
ゾロアークが呆れたようにボクを見る。
「…昔から、そんな酷い人間がいたなんて…信じられないよ…」
【悔し涙の理由はそっちかよっ!】
「え、違うの?」
【お前、やっぱバカだろ?】
何故かは知らないが、ゾロアークに軽く叩かれる。
「…叩く事ないじゃないか…」
【その頭に脳みそ詰まってるのか確かめただけだ。
…ったく、オレがせっかく嫌なモン掘り起こしてまで、あの女が英雄に相応しい奴じゃねぇって事を教えてたってのに…】
「まぁまぁ、そう怒るなって」
【誰のせいだよ、誰の】
このままでは確実にゾロアークの不機嫌度がMAXになって、ボクが八つ裂きにされかねない。
そうなる前に、ボクは彼の話を簡単にまとめた。
「…つまり、ライカはNを止める為に英雄になるって話だったよね?」
【まぁな】
「別にボクはそれを否定しないよ。
それが彼女の求めるものなら、ボクが止める権利は無い」
【…んな事言って、お前も英雄から逃げんのかよ…!】
ゾロアークは怒りを露わにし、ボクに向かって唸り声を上げる。
「…そうだね、できるなら……逃げたい。
でも…」
寝転がった体勢から身体を起こすと、サラサラと流れる川を見つめる。
「…今、ボクにできる事。
それからも逃げてはいけないんだ。
ボクは、英雄になる為に旅をするんじゃない。
今よりも自分にできる事を増やす為に…もっと強くなる為に旅をするんだ」
【……ケッ。手っ取り早く"英雄にはならない"って言えよ。
…けど、Nの視る未来は『絶対』だ。
お前は必ず英雄になる運命だろうよ】
「…だったら、それを弾き返すまでだ」
互いに譲らない信念を持って睨み合っていると、Nがこちらに近付いてくるのが見えた。