Heroic Legend -間章の灰-
□第54話 憎しみの理由-ワケ-
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そう、あの日が来るまでは―――…。
†.
「――――皆様、よく考えて下さい。
ポケモンはどうあるべきかを…」
それは、気まぐれに遊びに行った小さな町でやっていた演説を聞いた瞬間から始まった。
当時のプラズマ団は静かに活動していた宗教団体のような物だった。
オレは、演説に登場したテーマ…ポケモン解放は凄いって思いはしたが、オレの中に強い猜疑心があった為、奴らの事なんて忘れて森帰ろう…と思った。
その時、奴らの先頭に立って演説をしていた奴…ゲーチスがオレに近付いてきた。
「…良い目をしていますね、アナタ。
数々の人間に対する憎悪が視えますよ」
アイツは、威嚇するオレを一目見ただけで、その感情を見抜いたんだ。
「アナタのようなポケモンを虐げる人間と戦おうとしている御方がおられます。
ワタクシ達は、その御方を筆頭に作られた組織。
…どうでしょう。
罪深き愚かな人間達からポケモンを解放する為に、我等が王の力になってはくれませんか?」
アイツの言葉を信じる気にはなれなかったが、オレはその"王"に興味を持った。
ポケモンの為に、そこまで力を尽くす物好きな人間がいるんだと思ってな…。
ただ、興味本位で奴らに付いて行ったんだ。
その気になれば、いつでも逃げ出せる…と軽率な事も考えていたしな。
そして、オレはそこで初めてNに出会ったんだ。
最初はコイツがあんな大人連中の王だなんて、どうしても信じられなかった。
それに、アイツも普通の子供には見えなかった。
いつもオレと似たような境遇を持ったポケモンと触れ合い、例えプラズマ団でも…人間には一切近寄らない。
人間との接触を断ち、常にポケモンと共にいた。
まぁ、オレにはどうでもよかったんだけどな。
どんなに噛み付いてやっても、どんなに顔を引っ掻いても、Nはオレを怖がる事無く好意的に接し、今までオレが受けた仕打ちの傷痕を見て…
「痛かったでしょ? 怖かったよね…?」
何て言いながらボロ泣きするような奴だった。
オレ達と同じ痛みを共感し、オレ達と同じ苦しみを分かち合おうとするアイツを見ている内に、オレは自然とアイツの存在に惹かれていった。
コイツとなら、一緒に戦えば…あの人間達からオレ達のような奴らを出さずに済むかもしれない。
出会って数日も経たない内に、オレは人間であるNに信頼を寄せる事ができたんだ。