Heroic Legend -間章の灰-
□第54話 憎しみの理由-ワケ-
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※ゾロアーク・過去視点
あれは約10〜11年前……Nがまだ小さい時までに遡るな…。
オレはNに会う以前…まだゾロアだった頃、前のトレーナーに雑魚扱いされて暴力を受けていた。
最初はただ耐えて…耐えて…耐えた。
耐えれば、耐え抜けば…またオレと戦ってくれる。
そう信じていた。
まぁ、今となってはバカらしいけどな。
当時のオレの期待を見事に裏切ったソイツは、金持ちのコレクターにオレを売り、大金せしめて逃げやがったよ。
でも、まだオレはそのトレーナーを信じていたさに、コレクターを幻影で出し抜いて脱走した。
アイツの所に帰りたい…その一心でな。
…捜して捜して捜し続け、オレはようやくアイツに会えた。
その時の喜びようっていったら、思わず笑っちまう位だったぜ。
けどな、ソイツ…何していたと思う?
アイツ、運が良いんだろうな…。
また新しいゾロアを捕まえて、バトルに負けたらソイツに暴力を振るっていたんだよ。
バトルに使えなければ暴力を振るう対象になる。
あの場面を見て、オレは恐ろしくなった。
このままでは、アイツもオレのように売られる。
それだけは何としてでも止めさせたかった。
気付けば、オレはそのトレーナーを攻撃していた。
そして、ゾロアのボールを破壊して、ソイツを連れ出したよ。
勿論、追っ手は得意の幻影で何とか撒いた。
それから、オレは警戒してきたゾロアに自分が受けてきた仕打ちを話し、オレ達は晴れて仲間となった。
これが、人間を憎む気持ちが芽生えた…原点だ。
オレはアイツに名前を付けた。
どっちもゾロアだったから、紛らわしかったのが理由だ。
それに…人間が付けた種族名なんて、あまり使いたくなかったしな…。
オレは『ジーク』と名乗り、ソイツに『アル』って名前を付けた。
アルは女だったから、もっと可愛げのある名前を付けようかと考えたが、本人がこれが良いって言っていたから、これで互いの名前が決定した。
オレとアルはハンターやコレクターといった、様々な人間に追われながらも…この森を見付け、ここで静かに怯えながら暮らす事にした。
今まで行った場所の中で、最も人間が来ない場所だったからな。
他にも同じ境遇のポケモンや、嬉しい事に…ゾロアも沢山いた。
オレ達はその群れに快く迎え入れられ、そこで仲間達と協力しながら静かに過ごしていったんだ。