Heroic Legend -間章の灰-
□第53話 朝
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散々悩んだ結果、ブリッツに手伝ってもらって、素材そのままの味を引き出した料理を作った。
いや、シンプルに『木の実の丸焼き』なので、作ったとは言い難い。
「凄まじく手抜きだけど、食べてね」
大きな葉っぱを皿に見立て、ブリッツが良い火加減で焼いた木の実を串に刺して盛り付ける。
実はエンテイも手伝おうとしたのだが、ライコウに止められた。
普段エンテイに従うスイクンも一緒になって止めていたので、エンテイは火力調節が苦手なのだとボク達は思った。
できた料理(と言っても丸焼き)を真ん中にし、皆で食べ始める。
最初は警戒していたゾロアーク達だったが、Nが何とか説得してくれたので、渋々だがこちらに来てくれた。
凄まじい嫌われように、若干ショックを受けたのは内緒だ。
「…こういう料理って初めてだな…」
カイスの実をかじりながら、ボクは呟く。
【普段はポケセンでタダ飯食うてるもんやしな】
【本当だよ。野宿なんて片手の指で数える位だしね】
「別にいいじゃないか。旅の経費を節約できるし」
【それを貧乏性言うんやで】
もっともな事をツッコんだジャルルだが、ボクは大して気にもしない。
寧ろ、目を見開きながら力説し始める。
「ジャルル、貧乏性って馬鹿にするけど、旅ってのは無駄な経費を抑えつつ…必要な時に使う。
立派な"やりくり"だよ。
だから殆ど無料のセンターは、ボクにとっては経費を抑えられる絶好の施設であって…」
【あぁはいはい分かった分かった。
はい、強制終了やな】
「こら、まだ話は終わってな…」
【お前、うるさいゾ。セレビィと話しができないんだゾっ!】
「ぐふっ…!」
後方から怪我をしたゾロアのダイレクトアタックを食らい、ボクは前に倒れ込んだ。
ジャルルはボクよりも持っていた木の実を率先してキャッチし、何食わぬ顔でボクを見下ろしている。
【フォリア、安心しぃや。
木の実は無事やで。食いもんは粗末にしたらアカンからなぁ…】
「…うん、ありがとう…」
助けてくれなかった事に少しショックを受けたが、自分の朝ご飯を救ってくれたのだから文句は言えない。
木の実を受け取り、再びかじり始める。
【セレビィ。このうるさい奴の近くにいないで、オイラと一緒に食べるゾ】
ボクとライコウに挟まれる形で座り、木の実を静かに食べていたセレビィを招くゾロア。
当のセレビィは、チラチラとボクを見ながら躊躇っている。