Heroic Legend -間章の灰-
□第53話 朝
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「……ヘブシッ!」
朝。
可愛げの欠片も無いくしゃみで起床。
当然だ。
もふもふの温かいエンテイと一緒に寝ても、寒い森の中での野宿だったのだから。
【…起きたか】
エンテイはボクを見て言う。
多分、寝ずにボクとセレビィを見ていてくれたんだ。
「おはよう」
【何だ、もう起きたのかよ。
間抜け面で涎垂らしてて、かなり面白かったのによ】
「嘘っ! マジでか?!」
不機嫌そうなライコウの言葉を聞き、口に手を当てる。
スイクンは溜め息を吐きつつも、ライコウを小突きながら言った。
【冗談だ。コイツは文句を垂れつつも何かとお前達を気にしたり、お前の仲間に早めに休憩を取らせたり…】
【うわっ、バカっ! うるせぇよスイクン!】
慌てふためくライコウに失笑していると、上着の中からもクスクス…と笑いを堪えているような声が聞こえてくる。
確か、冷やさないように上着でくるんでいたような…。
上着をめくると、妖精のようなポケモンが可笑しそうに、一生懸命笑いを堪えていた。
「セレビィ、目が覚めたんだね!」
【あっ…!】
セレビィはボクを見ると、恥ずかしそうにエンテイに飛び付く。
【セレビィ、無事に目覚めて何よりだ…】
【エンテイ…】
警戒はしていないが、興味津々な目でボクをチラチラと見るセレビィ。
【すまないな、セレビィは人間とはあまり接触しないから、我等といるお前が珍しいのだろう】
誤解を受けないようにエンテイが説明をしてくれたので、ボクはとりあえず嫌われていない事にホッとした。
今更だが、Nとゾロアーク達がいる場所が何だか騒がしい。
何気なくそちらに顔を向けると、数匹のゾロア達が怪我をしたゾロアとの再会を喜んでいた。
「…成る程。昨日感じた気配は、あの子達だったのか…」
ボクは納得したように呟くと、おもむろに立ち上がって伸びをする。
ひんやりとした空気が気持ちいいが、もう少し暖かければ…と思う。
【フォリア、おはようさん。
ほら、朝ご飯採ってきたで〜】
呑気そうに木の実を抱えながら、ジャルルとブリッツがやってきた。
【人間でも食べられるような奴もあるから、調理は任せたよ】
「え、ボクに任せる気?」
目の前にゴロゴロと置かれた木の実を見ながら、ボクは尋ねた。
料理は母さんの手伝いでよくやっていたから、ある程度はできる。
けれど、木の実オンリーの料理はやった事が無い。