Heroic Legend -間章の灰-
□第51話 類は友を呼ぶ…?
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†.
――――長い廊下を照明で照らされ、その突き当たりには一つの自動式スライドドアがある。
その上に掲げられている赤い光に白文字で『治療中』と表示された文字消しパネルを見つめながら、ボクは廊下のベンチに座っていた。
「…ハァ…」
ポケモン達の治療に入ってから、およそ30分位経つ。
ボクは、もう何回ついたのか分からない溜め息を漏らしている。
―――生まれて初めてポケモンを叩いた。
自分の手を見つめ、手首を軽く捻ってみる。
「…痛い」
自傷行為に見えるが、ほんの僅かな力を入れているだけで、全く痛くない。
…本当に痛いのは、自分の胸の真ん中……何かが蠢いているように、疼いてくる。
それと同時に、ザワザワと自分を責める念が押し寄せる。
「…ハァ…」
再び漏れ出す溜め息。
…何で、叩いたんだ?
ボクには…そんな資格は無いのに。
ボクは……最低だ。
静寂な時間を全て費やし、自分を責め続ける。
「…クソ…!」
何処へ向ければいいか分からない怒りを抱えながらいると、パッとパネルの光が消えたのが目に入った。
ドアがスライドして開き、中からストレッチャーを押したタブンネが出て来る。
その後ろからは、皆ご存知のジョーイさん。
「無事、治療は終わりましたよ」
ジョーイさんから二つのボールを受け取り、その知らせを聞く。
「…アックスは、大丈夫ですか?」
ストレッチャーの上でぐっすりと眠っているアックスをチラリと見ながら、ボクは尋ねた。
ジョーイさんは、少し暗い表情になりながら、ボクに彼の容態を伝える。
「…怪我はあまりありませんでしたが、体力を限界まで使い果たしている為、今は深い眠りについています。
丸一日安静にしていれば、すっかり良くなりますよ」
「ありがとう…ございます…」
バツが悪そうにジョーイさんから目を逸らして、ボク達はとある病室へと移った。
病室内はシンプルで、アックスの他にも様々なポケモン達がベッドの上で療養していた。
その隣には、トレーナーがいたり…いなかったりする。
ボクはアックスといるのが気まずかった為、眠る彼に一声掛けてから、逃げるように病室を後にした。
†.
【…なぁ、えぇんか? アックスを置いてきてしもうて…】
ライモンシティより少し離れた16番道路を歩き、後ろからはボールから出したジャルルとブリッツがのんびりと付いてくる。