Heroic Legend -間章の灰-

□第51話 類は友を呼ぶ…?
1ページ/13ページ

†.



――――長い廊下を照明で照らされ、その突き当たりには一つの自動式スライドドアがある。


その上に掲げられている赤い光に白文字で『治療中』と表示された文字消しパネルを見つめながら、ボクは廊下のベンチに座っていた。

「…ハァ…」

ポケモン達の治療に入ってから、およそ30分位経つ。
ボクは、もう何回ついたのか分からない溜め息を漏らしている。




―――生まれて初めてポケモンを叩いた。


自分の手を見つめ、手首を軽く捻ってみる。

「…痛い」

自傷行為に見えるが、ほんの僅かな力を入れているだけで、全く痛くない。

…本当に痛いのは、自分の胸の真ん中……何かが蠢いているように、疼いてくる。
それと同時に、ザワザワと自分を責める念が押し寄せる。

「…ハァ…」

再び漏れ出す溜め息。


…何で、叩いたんだ?

ボクには…そんな資格は無いのに。

ボクは……最低だ。


静寂な時間を全て費やし、自分を責め続ける。


「…クソ…!」

何処へ向ければいいか分からない怒りを抱えながらいると、パッとパネルの光が消えたのが目に入った。

ドアがスライドして開き、中からストレッチャーを押したタブンネが出て来る。
その後ろからは、皆ご存知のジョーイさん。

「無事、治療は終わりましたよ」

ジョーイさんから二つのボールを受け取り、その知らせを聞く。

「…アックスは、大丈夫ですか?」

ストレッチャーの上でぐっすりと眠っているアックスをチラリと見ながら、ボクは尋ねた。
ジョーイさんは、少し暗い表情になりながら、ボクに彼の容態を伝える。

「…怪我はあまりありませんでしたが、体力を限界まで使い果たしている為、今は深い眠りについています。
丸一日安静にしていれば、すっかり良くなりますよ」

「ありがとう…ございます…」

バツが悪そうにジョーイさんから目を逸らして、ボク達はとある病室へと移った。




病室内はシンプルで、アックスの他にも様々なポケモン達がベッドの上で療養していた。
その隣には、トレーナーがいたり…いなかったりする。


ボクはアックスといるのが気まずかった為、眠る彼に一声掛けてから、逃げるように病室を後にした。









†.


【…なぁ、えぇんか? アックスを置いてきてしもうて…】

ライモンシティより少し離れた16番道路を歩き、後ろからはボールから出したジャルルとブリッツがのんびりと付いてくる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ