Heroic Legend -間章の灰-
□第45話 痛みと和解
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話が終わると、病室に静寂が訪れる。
イッシュ建国伝説は、あまり知られていない神話。
様々な憶測が飛び交う神話の中でも最も古い神話で、何しろイッシュの始まりを表すものだ。
…そんな神話が実話なのか…そんな根拠も何も無い状態で、Nは伝説のポケモンに会うと言っている。
普通の人間なら、「バカげてる」の一言で一蹴するだろう。
でも、何故だ?
ボクにはそうだと思えない。
「…所詮、ボクも普通じゃない…って事か…」
自分の存在を再確認するように呟いた。
Nにはボクの一言が聞こえていなかったらしく、呑気に窓を開けてマメパトと話をしている。
「……その神話についてはだいたい分かった。
話は変わるけど、ジャルル達を引き取りに行く場合には連絡しろって、母さんから聞いたんだけど…」
Nはマメパトに別れを告げ、クルリとこちらを向いてから答える。
「ボクが予測していた日から大分経ったけど一向に掛かってこないから、こっちから掛けたんだ」
チラリと自分のライブキャスターを見せながら、話を続ける。
「そうしたら、電源が入っていないから不通だし、ジャルル達が様子を見に行くって不安そうに言うから、こうして足を運んだんだ」
…そういえば、確か研究所にライブキャスターを置いてきたような…。
肝心の通信手段の在り方を思い出していると、ピリッとした空気を感じる。
それが両手のボールから発せられている事に気付き、ジャルル達が入ったボールを元の大きさに戻した。
「…うわぁ…」
全員、揃ってボクにガンを付けてました。
そりゃもう、こっちが涙目になる位に。
「…大分怒ってるね。
ボクもキミが彼らを見捨てたんじゃないかって思っていたけど、どうやら取り越し苦労だったようだ」
そう言って、Nは病室を出ようと入り口の方へと移動する。
「……キミみたいなトレーナーなら、なれるかもしれない」
「え? 何か言った?」
ポツリと呟くNの声が上手く聞き取れず、思わず聞き返した。
Nはこちらを振り返ってからフッと笑い、
「何でもない」
とだけ言って、病室を去って行った。