Heroic Legend -間章の灰-
□第44話 絵を描く少年
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「母さん…」
「今日はプリンとリポ○タンDを買ってきたわ」
「何でリ○ビタンD?! それ、昨日も買ってきたよね?」
「リポビ○ンDを飲めば、ファイト一発で元気になれるのよ」
「それは気合を入れてるだけなんだって…」
「何を言ってるの、フォリアったらっ。
リポビタ○Dはね………」
母さんは袋から品物を取り出しながら、○ポビタンDについて熱く語り始める。
最近のやり取りは、いつもこんな自然な感じだ。
目が覚めた日の夜、ボクは母さんに記憶を取り戻した事を話した。
そして、アーテルやあの人格の存在の事も、大まかな部分だけだが話した。
母さんは多少驚いたが、それでもボクの話を信じてくれた。
けれど…あの左手の紋章や"核"の事は話していない。
と言うか、話せない。
"核"が消滅したら死ぬだなんて、口が裂けても言える訳が無い。
それに、これ以上母さんに無駄な心配を掛けさせたくないというのが、一番の理由だった。
話せる事だけ話すと、母さんは嬉しそうに父さんやトウヤ達の思い出話をしてくれた。
それから、少しだけど…母さんと父さんの出逢い話も聞かせてくれた。
話している時の母さんは、本当に嬉しそうで…幸せそうで、ボクも胸の奥が暖かくなっていった。
目が覚めてしばらくは安静だった為に面会が禁じられていたが、今日はそれもいよいよ解禁。
早速チェレンやベルが見舞いに来るから、ボクは朝から少し機嫌が良かった。
「あぁ、そうだ…。母さん」
受け取ったプリンを食べながら、ボクは母さんに話し掛ける。
「ん、何?」
脇のキャビネットに生けてあった花を取り替えながら、母さんは振り返った。