Heroic Legend -間章の灰-
□第40話 Comeback
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フワフワでもツルツルでもない…少しゴツゴツした皮膚を撫でながら、初めてジャルルを抱き上げた日の事を思い出す。
キバゴよりはツルツルとした感触だったが、ひんやりといい感じに冷たい体温がそっくりだ。
(アックスも…確かこんな感触とかだったな…)
そんな事を考えている内に、ふと…彼らと共に過ごした記憶が走馬灯のように蘇ってくる。
初めて歩いた道。
初めてバトルした事。
初めて一緒に食べた物。
初めて訪れた場所。
…いつだって、何処へ行く時だって、いつもポケモンが一緒だった。
こうしている今も…、このキバゴと一緒にいる。
ボクは……いつだって、一人じゃ無かったんだ…。
「…」
【…フォリア? 泣いてるんですか?】
大きな瞳を不安げに揺らして、そう尋ねるキバゴ。
彼にそう言われるまで、目頭が熱く…冷たい水が顔を伝っている事に気付かなかった。
「…本当だ、泣いてるね…」
【……寂しい、ですか?】
ジッとボクの目を見つめながら聞いてくるキバゴに、ボクは静かに頷く。
【苦しい…ですか?】
「うん…」
【辛いですか…?】
「うん…」
【…皆さんに、戻って来て欲しいんですよね…?】
「………うん」
ようやく、自分に素直になれた答えに頷けた。
…本当は、戻って来て欲しい。
だけど、もう戦うのは…嫌だ。
嫌だけど…みんなには、傍にいて欲しかった。
こんな事を言うのは、ワガママに決まっている。
けれど、そんなワガママを突き通したい位…みんなが大好きなんだ。
もう、こんな寂しい思いは嫌だ。
だけど、みんなが傷付いて…死んでいくのは、もっと嫌だ。
「ねぇ…ボクは、どうすれば…いいんだろう……?」
そう呟きつつも、だんだんと眠気の方が勝ってきたので、最終的にはフッ…と意識を落としていった。
†記憶の部屋
「…って、何でまたここにいるんだ…?」
今回はコバルオンの力も無しに、何故かここへ来てしまっていた。
(さっき寝たばかりだから、夢オチなのか…?)
最も近いような事を考えながら、キョロキョロと周りを見渡す。
目的は、アイツ…Xを見付ける事だ。
前回は記憶を思い出してからの事があやふやになっていて、結局聞けなかった質問が2、3個ある。
この部屋に来た事には驚きが抜けなかったが、逆に好都合だ。
Xを見付けなければ…。
そう思いながら辺りを捜そうとした時、
「…そんなにキョロキョロ捜さなくても、オレはここにいるぜ」
と言う声が聞こえてきた。
素早く、その方を振り返る。
「トウ――…いや、X…!」
思わず今まで呼んでいた名前で呼びそうになるが、途中で言い直す。
「いや、何だよ"X"って…。変な名前で呼ぶなよ…」
Xは怪訝な顔で、そう呼ばれる事を嫌がった。
「…ここは、ボクの記憶の部屋?」
一応、確認のつもりで尋ねた当たり前の質問に、コクリと頷くX。
「この部屋は、オレの意のままに扱える事が出来る……言わば"オレそのもの"が、この部屋とでも思えばいい。
だから、お前の意識をここに呼ぶ事も出来る。
……ただし、お前の意識が覚醒していない時のみだがな…」
つまり、睡眠中の時…もしくは気絶等、何らかの事象でボクの意識が現実に無い場合等に彼が呼べば、この部屋に入れる…という事で良いのか…。
もっと砕いて言えば、夢を見ている状態…とも言える。