Heroic Legend -間章の灰-

□第40話 Comeback
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車を飛ばす事、約1時間…。


何と、来た時よりも半分の時間で、あっという間にカノコに帰ってきた。

しかし…


「さぁ、カノコに着いたわ!」

「…」

「…」

アララギ博士はピンピンしていたが、ボクとキバゴ、クロード達は見事に車酔いしていた。


【き…気持ち悪い…です】

「同感…だよ」

「ほら、あなた達! いつプラズマ団が来るか分からないのよ?
さ、降りた降りた…っと!」

グイグイと博士に引きずられ、ボク達は車から降ろされる。

そのまま、研究所へ向かおうとするが、フラフラと地面に両手を着いてしまった。


「は…博士…」

「どうしたの?」

博士がしゃがんで、ボクと同じ位の低さに合わせる。

ボクは車酔いの不快感を抑えながら、伝えたい要件を言った。


「…母さんに、この事を伝えないと…いけないんですけれど…」

「キリアさんに?」

そう尋ねられ、必要以上は喋らずに素早く頷く。

「あぁ、そっか…。あなたが帰ってる事は、まだ言ってないんだっけ…。
…分かったわ。私が警戒するように伝えておくから、あなた達は先に研究所で休んでなさい。
この短時間でも、疲れが大分溜まっているみたいだし…ね。」


(いや、これの大半は博士の運転のせい…)

そんな事を思いつつも、お言葉に甘える事にした。

顔が真っ青なクロードを促し、研究所の中へと入る。


博士は、そのまま母さんの所へと歩いて行った。




中に入り、すぐ傍にあった回復マシンを見ても、ここを出る前と何も変わった事は無かった。

空のボールが五つあるだけ。

何も入っていないボールを見つめていると、ふと胸にモヤモヤしたようなモノが溢れてくる。

(…ジャルル、ガルダ、ブリッツ、ヤイバ、ランプル……)

かつてこの中に入っていた家族の…仲間の名前を心中で呟きながら、ハッとする。

(…っ駄目だ! もう、みんなは自由な野生のポケモン…。
ボクは、みんなの幸せを願うだけなんだ…!)

ふと、研究所に帰ったら、みんなが戻ってきている…なんて微かに期待していた自分がいた。



寂しくない。

嬉しい筈なんだ。

みんな…ボクみたいな人間から解き放たれて、幸せになる。

それでなければ…。


(あ…また、勝手な事を考えてた…)

ハァ…と溜め息をつきながら項垂れるボクを不審に思ったのか、クロードが話し掛けてきた。


「なぁ、オレと最初に会った時に連れていたポケモン…いないのな?」

「あぁ、うん。まぁね…」

「……逃がしたのな?」

鋭い指摘に、頷くしかなかった。


しかし、クロードは怒りも悲しみもせずに、

「そっかぁ…」

と呟いただけだった。


そして、そのままリビングにあったソファーに横になり、

「…きっと、帰って来るのな」

と言って、僅か数秒で寝息を立て始める。



(帰って来ないよ…)

気楽に寝ている彼を見ながら、小声で呟く。


そのまま自分が使っていた研究室に入り、トボトボと仮眠用のベッドに近付いた。

ゆっくりと腰を掛けると、肩に乗っていたキバゴがピョンと脇に着地する。


【隣で寝てても良いですか?】

「…別に許可取らなくても、好きにしたらいいよ…」

【はい】

コロン、とキバゴがベッドの端で横になる。

ボクも同じ様に横になる。

そして、端で寝ているキバゴをそっと抱き寄せた。

【…?】

「…ごめん、しばらくこのままで…お願い」

キョトンとしながらも、コクリと頷くキバゴ。
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