Heroic Legend -間章の灰-
□第37話 恐怖・刻印・記憶の渦中
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そんな可愛がりようをされても弟は嫌な顔一つさえせずに、逆に身体の調子が良い時には姉を引っ張って遊びに行くという、どちらが上なのか分からないような感じだった。
そんな弟に『その能力(チカラ)』は目覚めた。
双子が三歳でペラペラと喋れるようになった頃、弟の方に妙な行動が見られるようになった。
「パパ!」
久し振りに仕事先から帰宅したライラックを出迎えながら、姉は嬉しそうにはしゃぐ。
「お帰り、パパ」
弟も同じ様な表情で、もじもじと身体を揺すっている。
「フォリア、トウヤ、いい子にしてたか?」
ライラックが尋ねると、姉・フォリアが元気よく「うん!」と頷くと、弟・トウヤは少し泣きそうな顔になった。
「トウヤ、どうしたんだ?」
ライラックが心配そうに尋ねるが、トウヤは自分の足に視線を落としたまま、だんまりを決め込んでいる。
「……ボク、びょーきになっちゃった…」
「えっ?!ママからそんな事は聞いた事は…」
「違う、ママには言ってない…。心配するから…」
「だからって、黙っていれば余計にママを心配させるんだよ?」
「う……」
トウヤが必死で溜めていた涙が、一気に目から溢れ出た。
ライラックはそんなトウヤをしっかりと抱き締めながら、彼の小さな頭を撫でる。
「フォリア、トウヤの病気の事は?」
「……知ってた。でも、ポケモンとお話ししているだけで、トウヤの身体も悪くなってないから…」
「トウヤが、ポケモンとっ?!」
思わず大声になるライラックの声に、フォリアもトウヤも同時にビクリと跳ね上がる。
「あ、いや…ゴメンよ。でも、良かった…」
「何が?」
トウヤが不思議そうにライラックを見つめる。
彼はニコリと微笑みながら、答えた。
「トウヤは、病気じゃないんだよ?」
「ほんと…?」
「あぁ、なにせパパだってポケモンとお話しが出来るからねっ」