Heroic Legend -間章の灰-

□第37話 恐怖・刻印・記憶の渦中
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※第三者視点











「キリア、もう体調は良いのか?」

「えぇ、あなたのお弁当も作らなきゃいけないし、この子達が元気ですぐ動き回るから、もうてんてこ舞いよ」

「だったら、少し休みなよ。
料理だったら僕だって出来るし、オムツとミルク位なら出来るから」

「ふふ、気持ちだけ貰っておくわ。
…でも、あなたが今頑張っている研究は、きっと世の中の為になる。私もそれを見たいから、早く完成させてね。
大丈夫よ、可愛い双子ちゃんがいるから、元気になれるわ」

「ありがとう、キリア」

茶髪をまとめ、蒼穹の瞳を持つ美しい女性が華のような笑顔で笑うと、端正な顔立ちの黒髪で深紅の瞳を持つ男性もつられて笑顔になる。

そして、ベビーベッドにくっ付いて眠る、双子の赤ん坊を幸せそうに眺めた。


この双子が生まれてから早三ヶ月。
双子の母親、キリアは育児に家事にとクルクル回るように働いていた。

双子の父親であり、キリアの夫であるライラックはポケモンと人間とのより良い調和を目指そうと、日々研究している科学者だ。

研究で時たま家に帰れない彼の身を案じつつも、キリアは愛する我が子達に惜しみない愛情を注ぎ、ライラックも仕事から早く帰れば、双子と沢山遊んであげるという、一見何処にでもいるような幸せな家族が、6番道路の小さな家に暮らしていた。


双子は両親の真っ直ぐな愛情を受けて、すくすくと育った。

姉は水晶玉のような目と父親譲りの黒髪を後ろにまとめ、活発な性格であり、弟は姉とは反対に大人しく、母親譲りの茶髪と父親と同じ深紅の目を持つ男の子だった。

弟は少し身体が弱く、身体が頑丈過ぎる姉とは違って、すぐ風邪を引いてしまう。

弟が風邪で寝込めば、姉は外へ遊びに行かずに付きっ切りで看病する程、仲の良い双子だった。


…と言っても、姉がただ甘えたがりで人見知りなので、弟にくっ付いたり同じ口調や一人称を真似るという程、姉は弟を溺愛しているだけなのだが。
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