Heroic Legend -間章の灰-

□第36話 記憶の部屋
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「何でキミが…ここに?」

思わぬ人物(人格だけど)に出会ったので、内心驚きを隠せずにいる。

しかし、トウヤは当然という風な表情をした。

「…お前な、ここが何処だか知ってて来たんだろ?」

「全然知らない」



自信満々に答えた為に、トウヤはガクッとコケそうになる。

よく見れば、彼の身体は幽霊のようにフヨフヨと浮いているではないか…。


「お…お前なぁ…!」

「コバルオンってポケモンに頼んだら、こんな所まで来たんだって…」

「コバルオン…? チッ、アイツが絡んでやがったのか…」

イラついた表情になったトウヤは、舌打ちをしながら呟く。


「…まぁ、いい。お前は記憶を取り戻しにここへ来た。
……結論から言えば、ここは『記憶の部屋』
オレはお前と入れ替わらない時は、常にここに眠っている」

「記憶の…部屋?」

「オレが勝手に付けた。
その名前の通りに、お前の生まれてから今日、そして今現在の記憶がここに保管されてある」

「本当にっ?!」

ファンタジーみたいな説明にボクが驚いていると、トウヤはコクリと頷きながらパチン、と指を鳴らす。

スゥッと先程見た物と同じ様なランタンが、ボクらの周りに姿を現した。

しかし、どれも灯りの色が違う。


「…これが、お前の記憶だ」

「これが…?」

不思議な灯りを見つめていると、トウヤはその一つを手に取って笑う。


「綺麗だろ?…こんな綺麗な色だからこそ、楽しい記憶・嬉しい記憶・温かい記憶・気持ちが良い記憶………そして…、





辛い記憶・悲しい記憶・苦しい記憶・憎しみの記憶が入り混じって、こんな色が出来上がるんだぜ?」

ボクは、不安そうにトウヤを見た。

何故なら、ランタンを見つめるその笑みに、何か黒いものを感じたような気がしたからだ。



「……お前さ、オレを疑った事なんて、一回もねぇよな」

「…?」

突然、トウヤの声に冷たさが走る。
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