Heroic Legend -序章の黒-
□第34話 フキヨセの洞穴
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「あ…ごめん」
「まぁ、いいよ…。ポケリスペクトとかター○ネーターとかの話は、また今度にして…」
「どっちも間違ってるんだけど…」
「細かい事は気にしないよ、ボクは」
「えぇぇ…」
そんなライカのツッコミを軽く流し、改めてトーンに質問をする。
「トーン、もう一つの頼みって何?」
「あぁ、あれ? まぁ…早い話……私と一緒に材料採取に行ってもらいたいの」
「採取…?」
意味が分からなくて首を傾げる。
「要するに、私は仕事の合間にこうして材料を採りに来てるの。
これ、名刺。ヒウンにあるから、是非立ち寄ってみてね」
パパッと名刺をボクらに渡し、話を続けるトーン。
「…で、今度大規模なミュージカルが行われるから、ウチの店に装飾品やら衣装やらの依頼が殺到しててね…。
それらの材料が足りなくなる前に、フキヨセの洞穴に採りに行く所だったんだけど、あたし一人じゃ流石に限界があって…。
…そこで、人手を借りようと思ってさ、フォリアのジャルルをメイクアップするついでに声を掛けたのよ」
「いや、ジャルルのメイクアップがついでじゃないの?」
そうツッコミを入れるが、トーンはチッチッと舌打ちをしながら指を振る。
「実のところ、材料なんて二の次。
あたしは、あんたのジャルルを可愛くさせたいから話し掛けたの。ついでの材料運びなんて、あたしの仕事仲間と一緒にやるつもりだったけど、人手は多い方が良いかな…っていう思い付きよ」
そう言ってカバンからボールケースを取り出す。
つまり、仕事仲間とは彼女の手持ちの事なのだ。
「…まぁ、ジャルルがお世話になったから断る訳にはいかないし……。
何より、ボクも最後の手持ちを捕まえに行くから別に構わないんだけどね」
【せやせや。フキヨセの洞穴には、おもろいポケモンがいそうな気がするで。ウチも賛成や】
ジャルルやボクが言っても、手持ちのみんなは何も言わない…という事は『依存は無い』と思っても良さそうかな…。
「いいの? ありがとうっ!
…そうだ、あんた達も手伝ってくれないかな? そうすれば、もっと沢山の材料が採れるし…」
クルリとライカとミハクの方を向きながら頼むトーン。
「えぇ、私も是非行ってみたいと思ってたから!」
「みはもじゃ。旅は色んな場所に行くのが醍醐味じゃからな!」
二人共、嬉しそうに二つ返事で返してくれた。
ボクはジャルルをボールに戻し、それをカバンへとしまう。
「じゃ、早速出発ねっ!」
トーンの合図で、ボクらはフキヨセの洞穴へ向けて出発する。
…しかし、ボクは何故だか違和感を覚えていた。
(フキヨセの洞穴…行った事が無いのに、初めて聞いた気がしない…)
そんな不安を少し抱えながら、ボクはみんなに遅れないように付いて行くのだった……。
†6番道路
ホドモエシティを抜けると、すぐに6番道路の木々が出迎えてくれた。
自然豊かな森のようになったこの道路には、様々なポケモンが自分達の生活を営んでいる。
「あれはシキジカ、あの葉っぱみたいなのはクルマユ」
草むらから顔を出してくるポケモンを見ながら、トーンはその名称の説明をしている。
ライカやミハクは説明されたポケモンを頷きながら見ているが、ボクは図鑑を持ち出して周りのポケモンを検索していた。
「便利よね、それ」
ライカが物珍しそうな表情で図鑑を見る。
「図鑑…見た事無いの?」
「うん」
「ポケモン図鑑は誰でも持てるって訳ではないんじゃよ。
ポケモン研究における世界的権威を持つ博士達が認めたトレーナーにしか与えない…と聞いた事があるぞ」
「そうなんだ…。ミハク、物知りだね」
そんな凄い意味を持つ機械をしげしげと眺める。
「まぁ、みはも図鑑を持っていた人に聞いた時に知ったから、あまり一般のトレーナーには知られておらんようじゃ」
「へぇ…」
「図鑑を持ってた人って?」
興味津々そうに質問するライカ。
実のところ、ボクも気になっていたりする。