Heroic Legend -序章の黒-

□第32話 対決、冷凍コンテナ
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「凄腕のトレーナーを捜してるんだろ? オッサン」

そう言いながらその人は近付いてくる。


ハスキーな声だな…。

男性か女性か分からない…。


突然な出来事で驚くチェレンやボクを余所に、ヤーコンさんはジロリと一瞥する。

「フン、ようやく出てきたか…
『盗聴ごっこ』は楽しかったか?」

「おいおい…盗聴たぁ、随分酷い言い方なんじゃねーの?
たまたま面白そうな話が聞こえてきたから、話し掛けるタイミングを窺ってただけなんだけど」

冗談じゃない、という風に両手を上げる。

「…それより、俺も混ぜてくれないか? そのプラスチック団とかいうのを捜す奴にさ」

…思いっきり名前、間違ってるし…。

その人は、キラキラと目を輝かせながらヤーコンさんに頼む。

(喋り方的に…男性? でも……何だろう…)

まだこの人の性別を考えていた時に、ヤーコンさんが何かを言おうとする。

…が、その前に今までフリーズ状態だったチェレンが口を挟んだ。


「ちょっと…、いきなり出てきて名乗りもしないくせに『混ぜてくれないか?』だって?
…ふざけてるの?言っておくけど、これは遊びなんかじゃないんだ。実力の無い人はお断りだよ」


「……ぷ、あははははっ!」

チェレンの話の何処にツボったのか、青年(仮)は突然笑い出した。



その態度にムカついたのか、チェレンがムスッとした顔をする。

「…何? 何が可笑しいの?」

「はははっ、いや…君があまりにも的外れな事ばかり言うから、思わず笑っちまったよ!」

「的外れ?」

チェレンが聞き返す。

そこでようやく笑いが止まった青年が、涙を指で拭いながら説明を始めた。

「あぁ、的外れにも程があるね…。
第一にこんなの遊びじゃない事くらい知ってるし、第二に俺は弱くない。むしろ実力主義そうな感じの君よりは強いと思うね」

「なっ…僕が弱いとでも言うのかっ!?」

青年の言い方にますます腹を立てたチェレンは声を荒げる。

そんな彼に、青年はしれっとした態度で返した。

「んな事言ってねーよ。そんなバカデカい声出すなっつーの」

「誰が…っ!」


『やかましいわ、黙れっ!!』


流石に頭に来たトウヤと、同じような状態のヤーコンさんが同時に怒鳴った。

(…てか、キミ達が一番五月蝿いよ)

トウヤと交代していたこの一時に、ボクは静かにツッコんだ。

《…あー、久々に大声出した…》
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