Heroic Legend -序章の黒-

□第28話 父と娘
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「因みに俺はバイトで係員しているんだ」

聞いていないのに答えを言うヒョウガ。

…多分、ボクが気になったような顔をしていたんだと思う。

「俺は暇潰しに立ち寄ったら、たまたま近くにいたフォリアが厨二病患者みたいに苦しみ始めて、マヌケ面してやって来たヒョウガと一緒に手伝ったんだ」

「来た…ネクの毒舌発言…」

ヒョウガがガクリと項垂れる。


うん…確かにマヌケ面は可哀想だね。

…そして、ボクは厨二設定と来たw
マジで痛かったんだけどな…。


「…で、どうしたんだ?」

ヒョウガは水の入ったコップを渡しながら聞いてきた。

ボクは水を一口飲んで、話し始める。


「…よく分からないんだ…」

「分からないって?」

ベルが不思議そうに尋ねる。

「ミュージカルは初めて観た…観た筈なんだけど…おかしいんだ。


…何て言うか…『ここには前にも来た事がある』というか…」

「つまりデジャヴを感じる…て事?」

「そう、それ…。でも、それだけじゃなくて…」

頭に手を当て、眉間に皺を寄せる。



「…最近、変な夢を視るんだ。とても悲しい感じの夢…」

ボクはベル達に夢の内容を話した。

出来るだけ思い出して、詳しく。


「…それって、過去の記憶とか何かじゃないのか?」

話し終えた後、少し考えるようにヒョウガが呟いた。

「え…? でも…ボク全然覚えてない…」

「いや、あくまで仮説だからな…。他にも前世の記憶とか平行世界にいる自分の記憶とか…」

「記憶系ばっかじゃん…しかも痛々しいし…。
…もっとさ、科学的に説明してよ。お前の好きなそういうファンタジー系じゃなくてさ」

大真面目に語るヒョウガを呆れ顔で一蹴したネク。


「えー…じゃあ過去の記憶しか有力説無いじゃないか?」

頬を膨らませ、訴えるヒョウガ。
少し不機嫌な表情をしている。

「まぁ…(仮)でいいか。」

「ちょい待ち。ボクの夢をそんな簡単に結論付けるな」

「だから仮説だから(仮)って言ったじゃないか」


細かい所を訂正されたので少しイラッときたが、話を聞いてくれた事もあったので黙っている事にした。

普通だったら「夢なんて所詮ただの夢だろ?」なんてバッサリと斬られてしまう。

議論はともかく、話を聞いてくれた事には感謝しなければならない。
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