Heroic Legend -序章の黒-

□第28話 父と娘
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『うっ…ひくっ…』

『―――泣くなよ、フォリア。いつかまた会えるから…』

『…うぅ…やだよ…行かないでよ……』

『ゴメン…。でもボクの為にお前とママを巻き込みたくないんだ。
――――ボクに…こんな力があったから…』

『…じゃ、一つ約束して? そしたら、ボク……泣かないで待ってるから…』

小さな小指をおずおずと出して、涙で滲む目で目の前の少年の顔を見る。

『お願い……ボクの事を絶対に忘れないで』

『――――忘れる訳ないだろ…』

少年の小指が自分の小指を絡め、固く約束を交わした。

『…ボクはお前を絶対に忘れたりなんかしない…約束だ。
だから、フォリアもボクを忘れないで…。





――――じゃ、また………』










――――――――…



「…ごめんね…」

忘れないでって約束したのに…。

忘れないでって約束されたのに…。



(…ボクは……キミの事が分からない…)

誰なんだ…?

すごく大切な人だった気がするのに…。




――――何も思い出せない。






――――――何も…ワカラナイ…。






…キミは…ダレ?






「……ぁ…」

「フォリア…目が覚めたんだね?」

目に涙を溜め込んだベルは安堵の表情でボクを見ていた。

「うわ…っ、ここ何処!?」


ガン――ッ。

勢いよく起き上がったせいで、ベルと頭が衝突する。

「「?!」」

お互い頭を押さえて蹲ってしまった。


「ご…ごめん、ベル…」

「いや…大丈夫だよ…」


しばらくして痛みが引くと、ボクはベルに質問する。

「ベル…ここってまだホールの中?」

「うん。フォリアが倒れたから、係員さんとお客さんの人が小部屋に運んでくれたの」

「…そのお客さんは俺で、係員はコイツだ」

ベルの後ろからひょっこりと顔を出したのは、

「ネクとヒョウガ!?」

山葡萄の目と童顔が特徴のネクが現れた。

その隣に立っていたヒョウガは、何故かホールの係員の服装をしていた。
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