Heroic Legend -序章の黒-

□第27話 決意と異変
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「…?」

状況が呑み込めずに、視線を宙に漂わせているボクにベルは心配そうに見つめる。

「え…覚えてないの?」

「―――んー…」

ボクは唸りながら記憶の糸を辿ってみた。




確か…事の始まりはプラズマ団を追い掛けて遊園地に向かった事から始まった。

下っ端の一人を捕まえて、もう一人を捜してたらNと再会して、一緒に観覧車に乗った。


それから…Nがプラズマ団だっていう事を本人から聞かされて、観覧車を降りてバトルを始めた。

そこからトウヤが表に出てきたから、記憶が朧気(おぼろげ)になっている。


バトルはボクらが勝って、そしてNが去って行っちゃって……ボクは―――…。




「……うっ…く…っゲホ…ッ……ゲホッ!」

「フォリアっ!」

今までの事を思い出し、急に胸がつかえるような感覚と共に、咳が出てきた。


ベルが慌ててボクを仰向けから横にさせて背中を擦る。

「…ゲホッ…ゲホッゲホッ…!」


…苦しい。

涙で視界が歪む。


しばらく咳が出たが、ベルが背中を擦ってくれたおかげで少し気分が落ち着いてきた。

「っ……ハァッ…ハァ……ハァ…」

「大丈夫? 落ち着いた?」

ヒュー、ヒューと息を漏らしながら小さく頷く。

「…ゴメンね、キツい状態なのに…」

切なそうに謝るベルは、ゴソゴソとカバンから5つのボールを取り出す。

「はい、これ…」

ボールの中には…

【フォリアっ!】

ジャルル達が嬉しそうな表情で手を振っていた。


「フォリアが眠っている間に、あたしが預かってたの。勿論、既に回復済みだよっ」

ベルがそう言いながらベッドの横にあったミニデスクにボールを置いた時、ガラッとドアの開く音がした。

「…おっ、おはよっ! 顔色はまだ悪いけど元気そうだな!」

ヒョコっと顔を出したのは、4番道路で釣りをしていた自宅警備員(仮)のクロードだった。

琥珀色の瞳は、相変わらずキラキラと輝いている。

「あ、この人だよっ、フォリアをおんぶして病院に連れてきてくれた人」

ベルがニコッと笑う。

クロードは病室に入ってくると、何やら白いビニール袋を持っていた。


「これ、さっき売店で買ってきたんよ。
…ハイ、あんたも。ずっと面倒診てたから、少し休憩した方が良いって」

袋から、あの暑苦しいCMで有名な栄養ドリンク『リ○ビタンD』を取り出してベルに渡す。
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