Heroic Legend -序章の黒-

□第26話 壊れた関係
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Nは睨むようにボクを見ながら話を続ける。

「ボクにはこれが危険な物に見えて仕方ないんだ。
ポケモンは人間から自由になるべきトモダチだ。
人間の愚かな勝負事の道具でも労働用の奴隷でもないっ!」

最後は吐き捨てるように言ってから、ポケモンをボールから出した。

そんなNの様子に、ボクは少し胸が痛む。


あの…いつもどこか余裕を持っている雰囲気のNが叫んでいる…。


…怒って、悲しんで……。


本気でポケモンの事を考えているんだ…。

でも…。

「ボクだって…」


本気で…。


「譲れないんだ…っ!」



ボクだって本気でジャルルや……みんなや…


ポケモンの事を考えているから…っ!



「ポケモンの幸せはポケモン自身が決める。ボクやN……人間が決める事じゃないんだ!」

【せや! 押し付けはキライやでっ!】


「なら、ボクはボクが正しいと思った事をする。
それがボクのやるべき事っ!」


向こうは既に戦闘態勢。

だったら、応じるまで…。

【…行けるか……フォリア?】

ジャルルがボールの中から心配そうに顔を上げる。




「…うん、大丈夫」

そう言って、ボクはジャルルを繰り出した。

Nのポケモンは茶色と黒の縞模様のポケモン。

図鑑にはメグロコと表示されている。


【…フォリア、あの下っ端共が逃げたぞ】

ガルダが少し焦ったように言う。

「本当だ…」

さっきまでNの後ろにいた下っ端達がいない…。


「彼らならボクが逃がしたよ。
同じ志を抱く同士の上に立つ者として守る責任がある」







「……それでオレ達が追えないように可愛いトモダチと自分で時間稼ぎ…ってか?
はっ…自己犠牲もここまで来るとエゴだな」

「キミは、フォリアとは違う感じの…」

フォリアには悪いが…強制的に入れ替わったオレは、Nを見据えて今の気持ちを語り始める。


「…さっきから聞いてりゃ、ポケモンの為同士の為……。

お前はポケモンをバカにしているのか?
ポケモンはただの時間稼ぎの道具じゃねぇ」

「それはボクだってこんな事はしたくはない。だけど、彼らは自分からこのバトルに志願したんだ。
だからボクもそれに応える」


「そうか」

オレはジャルルと目を合わせる。


彼女はオレの気持ちを察するかのようにゆっくりと頷いた。

「…だったら、本気で相手するまでだな」
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