Heroic Legend -序章の黒-
□第20話 冷戦
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「やっちまえ、ミルホッグ!」
「ヤイバ、油断するな!」
【承知!】
オレ達の戦いが始まると同時に、チェレンとアーティも動き出した。
ヤイバの相手はミルホッグ。
「ミルホッグ、噛み付くだ!」
下っ端がヤイバを指差しながら、攻撃指示を出す。
自分に向かって噛み付いてくるミルホッグに、ヤイバは余裕の笑みを浮かべながらかわした。
【フン、所詮はこの程度だな…】
「いい調子だな…。これなら行ける」
ミルホッグは相手を混乱させるトリッキーな技を持つポケモンだ。
この戦いは既にフォリアを通して少し学んだから、冷静に対処できる。
「まぁ、ジムリーダーのミルホッグ程手強くないからな…すぐにケリをつけられそうだな」
「チッ…バカにしやがって…ガキのくせに!」
下っ端が悔しそうな顔を向けながら地団駄を踏む。
「ハンッ! ガキだから勝てるとでも思ったのかよ?」
【浅はかな考えだな】
ヤイバも呆れ顔になる。
「…ヤイバ、ミルホッグに接近だ」
指示と同時にヤイバが飛び出す。
下っ端はすぐに反応出来ず、滑稽なまでのポカンとした表情になった。
ミルホッグも、トレーナーの指示が無いから焦り出す。
「力の違いってのを見せるぜ…シェルブレード!」
【ハァッ!】
ヤイバは持ち前の素早い動きで、ミルホッグに『シェルブレード』を連続で食らわし、あっという間に戦闘不能にさせてしまった。
これは、狭い木々の間を風のように走れるヤイバだからこそ出せるスピードだ。
「そ…そんな…」
倒れたミルホッグを見て呆然とする下っ端。
隣では、あとの二人も相手を戦闘不能にさせていた。
「な…なんだこいつら…」
「強い…。」
倒れたポケモン達を見ながら、じりじりと後退していく下っ端達。
「当然だよ。お前達とは強さが違うからね」
チェレンがレパルダスを従えて、下っ端を一瞥している。
アーティは、緑色の丸いポケモンを撫でながら、ニコリと柔らかく言った。
「さぁ、僕らの勝ちだから…退いてくれるかな?」
最後の一言は鋭い目付きで、相手を睨み付けたが。
…なるほど、ジムリーダーの名は伊達じゃないという事か…。
「ち、ちくしょぉっ!」
「こうなれば、七賢人様にご報告だ!」
下っ端達は口々にそう言うと、ビルの中へ一目散にダッシュしていく。
オレはみんなに手で合図を出しながら、ビルの中へ入っていった。