Heroic Legend -序章の黒-
□第15話 ナチュラルボーンママ
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「―――――こちらが飛行中に何らかの事故に遭い、そのまま化石となってしまったドラゴンポケモンの骨です」
Nと別れ、ボクらは予定通り博物館を訪れていた。
ここの副館長さんに展示品の話を聞かせてもらいながら、周りをキョロキョロ見回す。
―――――…やっぱり変わってないな、昔とあんまり。
変わったと言ったら、展示品が少し増えた位かな…。
「…いやぁ、若い人の案内をするのは久しぶりですよ〜。
最近の若いトレーナーはジム目当ての人ばかりでしてねぇ…」
「…そうなんですか。ボクは結構好きですよ、こういうもの」
古代の石板を見ながら副館長さんと他愛も無い話をする。
副館長さんも張り切って、色々と説明してくれた。
そして、最後の展示品の前に来た時、ボクはハッとする。
何故なら最後の展示品は、あの時触った………あの黒い石だったからだ。
「…これはただの石です。たまたま発見して、綺麗だったので飾っているんですよ」
「あの…少し触ってみてもいいですか?」
ダメ元でお願いしたが、
「えぇ、構いませんよ。どうぞお好きなだけ」
と、あっさりOKを貰ったのだった。
ボクは、石の前に立つ。
昔と変わらず、この石だけは他の展示品と比べて、雰囲気が違う。
引き込まれるような美しさ…。
怖いくらいに、綺麗…。
「…」
そっと息を呑み、恐る恐る石に手を触れた。
―――――シーン…という効果音が一番似合う。
何も感じない。
おかしい。
昔触った時は、確かに―――――…。
《残念だが、お前にオレを知る資格はまだ無いって事だ》
頭の中で、聞き慣れたアイツの声がする。
「でも、キミはこの石に何か関係があるという事になるんじゃない?」
少し悔しくなって言い返してみた。
幸い、副館長さんは他の人の案内に行っていたから、声を潜める事無く話せる。
《…察しがいいな。だが、それとこれとは話は別だ。
まぁ、いずれ時が来たら話してやるからさ》
「…いつもそればっかりじゃないか。教えてって言っても教えてくれないし…。
その内その内って…!」
だんだん口調が駄々をこねる子供みたいになってくるが、今は気にする事じゃない。
トウヤの事をただ知りたいだけじゃ、駄目なのか…。
記憶にさえ残らなかった弟であり、大事な家族なのに…。
最終的にぐずるボクに、トウヤが呆れたように言い放った。