Heroic Legend -序章の黒-

□第14話 誰にも見えないモノ
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ポケセンで一夜を明かしたボクらは、博物館見学をする事にした。

今の若者なら絶対に興味無いと思うけど、ボクには気になる事が一つだけあった。


《…お前が本当にオレの事を知りたくなったら、教えてやる》


とか、小さい頃トウヤに言われたけど、やっぱり自分でも調べてみたいから行くんだけどね。

幼い頃にママと行ったあの博物館にあった石に触れて……

いきなりアイツが現れたんだ。

だから、きちんとそこに行って調べないと…。









「着いた、シッポウ博物館…」

ポケセンから歩いて数分もしない内に、博物館の前に来ていた。

【…カビ臭っ!】

ジャルルが鼻を押さえて上着のフードに顔を埋(うず)める。

確かに博物館独特の匂いがする。

ジャルルをボールに戻し、博物館の入り口に近付く。

もう一度、あの石の所に行けばきっと―――――……。


ドン―――――ッ!


丁度、博物館の入り口で人とぶつかり、そのままボクは尻餅をつく。

「いっつ……」

尻を押さえながら立とうとした時、上からよく知る声が降ってきた。

「やぁ、ボクとキミっていつもいきなり会うよね」

その声に驚いて上を見上げると、若葉色の髪の青年がボクを見下ろしていた。

「…またキミなの? N……」

Nは何が可笑しいのか、クスッと笑いながらボクの手を掴んで引っ張りあげる。

その勢いで、ボクの体はあっさりと引き上げられた。

「Nは何をしに博物館へ来たの?」

上着とズボンの汚れを払いながらNに質問する。

Nは顎に手を当てて考える仕草をすると、ボクを見て、

「ん、知りたい?」

と聞いてきた。

って、質問に質問で返すな。

と、突っ込みたかったが、あえて彼の問いに答える事にした。

「Nは古いものが好きなの?」

「古いモノ、と言うよりは少し違うかな。
…ボクはね、誰にも見えないモノが見たいんだ」

……はい?
また電波な事を言い出したよ、この人。

「誰にも見えないモノ? ……例えば、空気とか…じゃないか。」

ボクのジョークを軽くスルーして、Nは話を続ける。

「誰にも見えないモノが見たい。
誰にも聞こえないモノが聞きたい。
ボールの中のポケモン達の理想。
トレーナーという在り方の真実。
そして、ポケモンが解放された未来…」

Nは空を仰ぎ見ながら、ボクに聞く。

「…キミも見てみたくはないかい?」

…すいませんすいませんすいません。
あなたの言っている事が、何一つ解りません。
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