Heroic Legend -序章の黒-

□第13話 辻斬りミジュマルの噂
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ヤグルマの森に着くと、南と西に別れた道があった。

「…あっちは暗そうだね」

【まぁ、とりあえずこっちにトレーナーも結構いるし、こっちに行こうよ】

ブリッツは水溜まりだらけの道を指差した。

どうして、水溜まりの道を選んだんだろう…? 炎タイプにとって水は苦手なはず…。

「ブリッツ、こっちは水溜まりだらけだよ?」

【…いいんだ、この道の奥にオイラの目当ての物があるんだ】

ボクを見上げるブリッツの目には、揺るぎ無い決心の光が宿っていた。

それだけこの奥にある物が重要なんだ……。

「うん、分かった。
じゃ、行こうかみんな!」

【ありがとう、フォリア】

【ウチは水溜まり大歓迎や!】

【…飛んで避けよう】

こうして始まった修行。

ジャルル達が疲れてくると、入り口にいた看護師さんが回復してくれたので、安心して修行に集中出来た。

ブリッツはいつもよりやる気満々だ。

いや、疲れても休憩もせずにトレーニングをしている所は、少しおかしい…。


ボクには思い当たる節があった。

幼稚園にやって来た、元ブリッツのトレーナーだった男が言っていた言葉―――――……。






『シッポウのジムではコイツがいれば楽勝なんだよ』


という言葉…。

いつ思い出しても腹立たしい…。
ブリッツはあの男の言葉を気にしているのかな…?

だから、こんな修行を…?

でも、ボクにはどうにも出来ない。
これは、ブリッツ自身が決めた事だから、修行を止めさせる権利は無いはず……。

【――――よしっ、ノルマ20体クリア!】

【ウチは30体クリアや!】

ジャルルの言葉に、ブリッツは悔しそうな顔をしている。

【じゃ、オイラは40体を目指すぞ!】

「―――――はい、修行は終了だよ」

思わずみんなにそう言ってしまった。
ジャルルとガルダは納得してくれたが、ブリッツだけはボクに文句を言い始めた。

【何を言ってるんだ、フォリア。
まだ、一番奥に行っていないじゃないか!】

「その為に倒れたら、困るんだ。」

【フォリア、オイラの事弱いとおもってるでしょ!?】

【ブリッツ、何アホな事言っとるんや!】

反論しようとするジャルルを手で制する。

そして、一言。

「あぁ、弱いって思ってる」

【…っ!】

「何を焦っているのかは分からないけど、強くなりたいと思って自分の力を知ろうとしないキミは、いつまで経っても強くなるはず無い。
――――心があまりにも弱すぎる」
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