Heroic Legend -序章の黒-
□第12話 雨宿りの語り合い
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Nはボクに気が付くと、
「あぁ…キミか…」
と呟いて、しゃがみこんだ。
その様子から、少し疲れているように見えた。
【何や! …アンタ、何しに来たんや?!】
ジャルルが敵意剥き出しで、Nを威嚇し始める。
ガルダとブリッツも怒るジャルルを見て、Nに敵意を示す。
「みんな、落ち着いて…。この人は悪い人じゃない……と思う」
【せやけど……っ!】
ジャルルは食い下がったが、Nにチラリと視線をやってから、ボクの傍にくっついた。
まだ、彼を警戒しているらしい…。
「…ハハ、キミのポケモンには随分嫌われているんだね」
「みんな悪い子じゃないから、あんまり気を悪くしないでね」
ボクはそう言いながら、ハイ○ュウを取り出した。
「ジャルル、何味が良い?」
【アップルや】
「ブリッツは?」
【レモン!】
「ガルダは?」
【…焼肉】
「そんな味無いから」
すかさず突っ込んだ。
ガルダは肉食なので、フーズも肉の味付けだ。
え…何の肉かって?
多分知らない方が良いと思う…。ボクも知らないけど。
ジャルル達にハイ○ュウをあげると、みんな嬉しそうに食べ始める。
ふと、Nを見ると、彼は目を丸くしながらボクを見ていた。
「…キミ、ポケモンの声が聞こえるの?」
「え…?」
「…キミが彼らに与えた食べ物の味が的中しているし、会話も成り立っている」
「……言ってなかったっけ?」
ていうか、本当にジャルル達の言っている事が分かっていたんだ…。
「だって――――っくしゅっ!」
何か言おうとしたNだったが、代わりに小さなくしゃみをした。
よく見ると、シャツも髪も雨に濡れてくしゃくしゃになっている。
「ちょっ…そんな格好じゃ風邪ひくよ!?
早く焚き火の側に来なよ!」
「ううん、大丈夫…」
…たく、変な痩せ我慢して……。
震えてるじゃないか…。
ボクは無理矢理Nの手を引っ張って、焚き火の側に座らせる。
「上のシャツだけでも脱ぎなよ。濡れたままじゃ、意味無いから…」
「…分かった」
Nは多少嫌そうな顔になったが、素直にシャツを脱いで、ボクに渡した。
ボクは着ていた上着を彼に着せる。
「何か寒そうだから、これ着て温かくしてね…。
今、温かい飲み物持ってくるよ」
「肩が出ているキミの方が寒そうに見えるんだが…」