Heroic Legend -序章の黒-

□第9話 進化と野良ポカブ
3ページ/4ページ

「…っ! …何で傷だらけなんだ、この子……」

ボクはポカブの痛々しいまでの体の傷を見て、絶句した。

【…た、す…、け…】

ポカブが声無き声で助けを求める。

ボクはカバンから傷薬とチェレンから貰ったオレンの実を取り出すと、女の子からポカブを受け取った。

「フォリアおねーちゃん…ポカブなおる?」

「大丈夫だよ、ボクが絶対治すから!」

サンヨウシティのポケセンまでは遠い。
せめて、応急処置だけでも……!

ポカブに傷薬を掛けて湿布を貼ろうとするが、傷に滲(し)みるらしくて暴れだすポカブ。

悲痛な叫びを聞きながら、ボクはポカブを一生懸命宥めようとする。

「頼む……っ! 落ち着いてくれ、ポカブ…っ!」

【フォリア、ウチが少し押さえたるわ!】

「傷に触らないようにね…!」

【分かっとる! ウチかて、こんなのほっとけへんよ!】

ジャルルは蔓でポカブの体の傷付いていない所と、足を絡めて固定させる。

【いたい…っ!】

「ごめんね…すぐ終わらせるから…っ!」

【うぅ…ぶたないで……。ごめんなさい、ごめんなさい…】

ポカブの声からは、謝罪の言葉と助けを求める言葉しか聞こえなかった……。





―――――……。

何とか応急処置を終えて、ポカブを保育園の中で休ませる。

女の子はさっきの応急処置を見て泣きじゃくり、ボクにしがみついてくる。

「…ひくっ、ポカブ……っ、かわいっ…そうっ…」

「うん…そうだね……」

女の子の頭を撫でながら呟いた。



許さない……、ポカブをこんな目に遭わせた奴を………絶対に!

《フォリア、オレにも五発殴らせろよな…》

頭の中で、トウヤも怒りに震えながら言う。

ううん、五発と言わず…五百発でも五千発でも……っ!








「なっ、何なんですか!? 止めて下さい!」

「るせぇっ! こっちはオレのポケモンを連れ戻しに来ただけなんだよ、ゴルァッ!」

保育園の方から、言い争いの声が聞こえてきた。

「…おねーちゃん」

女の子が聞こえてくる怒号に怯える。

「……大丈夫、保育園の中へ行こう。ボクがポカブとみんなを守ってみせるから」

「…うん」

女の子は素直に頷くと、一緒に手を繋ぎながら保育園へ戻る。

言い争いをしているのは、保育士さんと何か悪そうな男だった。

ジャルルは敵意剥き出しで怒鳴っている男を睨み付ける。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ