Heroic Legend -序章の黒-
□第5話 VS ベル
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「……」
呆れる…、割れたらどうするんですかママ……。
でも一応元トレーナーなんだよなぁ…。
「はい、フォリア」
ママはタマゴをボクに渡す。
ビクンッ――――! とタマゴが手の中で跳ねた。
「うわっ!?」
驚いて、タマゴを落としそうになった。
タマゴに耳を当てると、コツコツと殻をつつく音が聞こえた。
「……生まれそう…」
「そう? 良かったわねぇ、フォリア。じゃ、ママもう行くね」
早っ!もう行くんですか?!
「まだあなたの部屋掃除が残ってるのよ☆」
「あ、そうか…。ゴメンね、散らかして。
…てか、今の読心術じゃ…」
ママはボクのセリフを綺麗にスルーして、ボクの頭を撫でた。
「いいのよ。その代わり、思いっきり旅を楽しんでね!
…でなきゃ、護身術を教えたかいが無いわ」
護身術伝授=トラブルに巻き込まれろ☆
って、方程式が成り立ちましたが。
あえて突っ込まず、ママにお礼を言った。
「ありがと、大事に孵(かえ)すね」
「そうしてね。
……フォリア、ポケモンにはどこまでも優しくしてあげてね。
ポケモンを虐(いじ)める人がいたら―――」
「『迷わず潰せ』っだっけ?」
…恐ろしい教訓だね、ママ。
「正解っ。じゃ、フォリア、頑張って」
「うん」
そして、ママはウォーグルに乗って帰っていった…。
【オレの子供をよろしく頼む】
ウォーグルが帰り際にそう言ったので、グッジョブサインを出した。
って、やっぱりアンタの子供だったんかい。
ワイフ(妻)は誰ですか。
【…何や、ママさん帰ってもうたんか?】
ジャルルがいつの間にか隣に立っていた。
「うん、ほら…ポケモンのタマゴ。もうすぐ孵るよ―――…」
ピキ…。
「【…?】」
今、音がしたような……。
ピキキ…ピキ…。
【フォリア、タマゴ!】
ジャルルが何を言いたいのか分かる。
急いでタマゴを見ると、殻にヒビが入っている。
え、まさかやっぱり割れちゃった……?
予想外の展開に慌てる。その時だった……。
パァァンッ!
音と共にタマゴが輝いた。
それはとても美しい、一つの命が孵る瞬間だった。
【……くぁ】
「か…孵った……」
ふわふわの羽毛に包まれて生まれてきた新しい命……。
【おぉ、出て来たんかいなっ!】
ボクは嬉しさのあまりその子を抱き締めた。
「こんにちは、初めまして…」